2016年、プロ野球のドラフト会議を見聞する

 

 5時少し前に始まった今年のプロ野球ドラフト会議はTBSの生中継、肩に力が入っていて、〈歴史が動く1日〉という大袈裟なキャッチコピーで始まった。槙原寛己さんと局アナがペチャクチャとうるさい。丸がかえのスポンサーはリポビタンD。いくらスポンサー料を払ってんのと貧乏人は気になる。
 重々しい「12球団入場です」という会場アナウンスで、今年の成績のビリの方から各球団幹部たちが入ってきた。
① ・・・オリックスバッファローズ
② ・・・中日ドラゴンズ
③ ・・・東北楽天ゴールデンイーグルス
④ ・・・東京ヤクルトスワローズ
⑤ ・・・埼玉西武ライオンズ
⑥ ・・・阪神タイガース
⑦ ・・・千葉ロッテマリーンズ
⑧ ・・・横浜DeNAベイスターズ
⑨ ・・・福岡ソフトバンクホークス
⑩ ・・・読売ジャイアンツ
⑪ ・・・北海道日本ハムファイターズ
⑫ ・・・広島東洋カープ
 ロッテの伊東勤監督がデブになったナ、とか、横浜の監督ラミちゃんの禿げっぷりは黒光りしてるナ、とか、余計なことばかり目につく。
 いよいよ1巡目の選択。オリックスは山岡泰輔クン(東京ガス)、中日は柳裕也クン(明大)、楽天は藤平尚真クン(横浜)、ヤクルトは寺島成輝クン(履正社)、西武は今井達也クン(作新学院)、阪神は大山悠輔クン(白鴎大)、ロッテは田中正義クン(創価大)、横浜は柳裕也クン、ソフトバンクと巨人と日ハムと広島は田中正義クンで、以下同文(笑)。
 つまり、柳君の2チームと田中君の5チームがバッティングした。また、阪神が指名した大山君は日刊スポーツのデータでは、大学野球の内野手と書いてあるのに、アナウンサーは盛んに「投手でなくて外野手の指名ですね」と言っていた。おい、ちゃんと事前に調べろ、TBS。
 柳君のくじ引きでは中日の森繁和監督と横浜のラミちゃんが引いて、森さんの籤が当り。この時、中継に映っていた柳君が、ニコリともせず、くさった様な顔をしていた。今年のビリチームで気に入らなかったのか、物凄い不満顔だった。やっぱり、「人買い市場」みたいなドラフトは罪作りだ。といっても、これは交渉権にすぎないわけだから、いやな球団ならば行かないこともできる。
 古い話だが、私はドラフト会議と言えば昔々の桑田真澄さんと清原和博さんの巨人指名争いを思い出す。清原さんは自分が巨人に指名されると確信していたのに、ジャイアンツが1位指名したのは投手の桑田君だった。まだPL学園の高校生だった清原君は大写しのテレビ画面で涙を流した。あの幼さの残った顔は忘れられない。
 クレバーな桑田君はプロ選手を引退後、大学で勉強したり、解説者としても一目置かれている存在だ。一方、清原君は知られた通り、道を踏み外した。あの時、ジャイアンツにドラフトで選んでもらっていたら、果たして彼の人生は変わっていただろうか。西武ライオンズの黄金時代に中心バッターとして活躍しても、後に、恋い焦がれた球団の所属になっても、18歳の時の挫折は彼の心から傷を癒せなかったのだろうか。
 さて、5チームがバッティングした田中正義クンは、ソフトバンクの工藤公康監督が引き当てた。中継の田中君は柳君とは打って変わってニッコリ。意中の球団らしい。創価大にこんな投手がいることにびっくりだ。日ハムの大谷クンなどとは同年代で、「正義」だから、綽名はジャスティスだって。
 田中投手を引き当てて大喜びの工藤さんのコメント。
 「5分の1だったので引き当てられてよかった。田中クンの投げるところはまだ見ていない。頭がパニクっている。早く見てみたいです」。それにしても、あのキューピーちゃん(西武時代、わが家では工藤監督のことをキューピーと綽名で呼んでいた。彼が、嫌いなソフトバンクへ行ってからはすっかり熱が冷めた)が歳食ったなあ。息子の工藤阿須加が結構な年だものなあ。
 田中クンを外した5チームが1巡目のセカンドで選んだのは、なんと、ロッテ、DeNA、巨人、日ハム、広島の5球団全部が佐々木千隼クン(桜美林大)だった。5チーム全員がバッティングは「今までにありません」とアナウンサーが興奮して言う。
 引き当てたのはロッテの社長。デブの伊東さんが席でニッコニコ。中継の佐々木君はあまり嬉しそうではなく、千葉では気に入らないのだろうか。
 終りの方で、最も人気のあった田中正義君へのインタビューがあった。なかなかのお利口さんである。
 「なるべく表情を変えないようにしました。ソフトバンクは行きたかった球団で嬉しかったです。大谷君と同じ舞台でやれるように成長したいです」と真面目そのもの。うーむ、頭もよさそうな青年だ。
 ドラフト会議でピッカピカに輝いていた青年が、年を経ずして消えてゆく場面を多く見てきた。最近ではハンカチ王子の斎藤佑樹クン。今は甲子園で負けた田中マー君の方がチャータージェット機で移動する身分だ。運命はすぐ暗転する。田中ジャスティス君も柳裕也君も努々(ゆめゆめ)それを忘れないでね。