西武ライオンズ 特急列車で快走中

 

    今はセ・リーグの熱狂的な阪神タイガースファンであるが、沿線に住んでいるので昔はパ・リーグの西武ライオンズを応援していた。昔も昔、今、ソフトバンク・ホークスの監督をしている工藤公康さんがピッチャーの頃のことである。
 1番印象に残っているのは、4番を打っていた秋山幸二選手が、1986年の日本シリーズで、ホームランを打って一周した後、ホームベースの前でバック転宙返りをしてホームを踏んだ姿である。あの頃の西武はみんな若くて生き生きしていた。私は黄金時代の西武ライオンズを知っている1人である。
 その後、森祗晶監督解任などの色々不明瞭なことがあって、私はすっかり西武熱が冷めてしまった。加えて、パ・リーグの試合は見向きもしなくなっていた。むしろ西武嫌いになって、長い疎遠の時期が過ぎた。テレビ中継でも西武ドーム(今はメットライフドーム)は相変わらずガラガラ。タイガースの満員とは大違いだったからだ。
 家族はまだまだ西武ファンで、私1人だけが鬼っ子のタイガース命。関東に阪神が来た時には、ほとんど1人で球場に出かける孤独な日々であった。
 ところが、突然、家族に誘われて西武球場に出かけることになったのである。ピッチャーが菊池雄星と則本昂大(東北楽天イーグルス)というエース同士、天候はピーカンの快晴であり、夫も行きたそうにしている。
 出かけました。
 A-60という階段表示の、ほとんどネット裏に近い1席5,000円の席を家族分買って座った。20段目でホームベースを見下ろす丁度いい高さである。3塁側(西武は3塁側を取っている)の内野外野はほぼ満員で、私たちが座るちょっと料金高めの場所はまだ空席が多い。
 対岸の楽天側はガラガラのままである。外野席の応援団だけは元気に旗を振っている。仙台からくるのは大変なのだろう。阪神はどこでもファンが多いが。
 西武球場は快晴のデーゲームなのに、天井があるので日陰で、そよそよと初夏の微風が天井と客席の間の空間から吹いてくる。気持ちがいい。
 昔は殺風景だったドームの天井下回りに、広告がぎっしりと掲げられている。外野の真上の電光掲示板の周りには、スポンサーのメットライフ生命、セブンイレブン、セブン銀行、西武やそごうのデパートロゴなどなどで満艦飾。隙間から緑が覗き、例えば東京ドームなどの人工的な球場より遥かに爽やかで美しい。
 2時近くなって試合が始まった。
 最近の西武ライオンズは西武特急と言いたいぐらいに勝っている。ホームゲームは開幕から負けなしの10連勝である。しかも、エースの雄星くんはこれまで勝ちっぱなし。この日も負ける気がしなかった。
 開幕早々、1回の表で雄星はヒットを打たれたが、続く2番をゲッツーに取って、後は3振。その裏、1番・秋山翔吾、2番・源田壮亮、3番・浅村栄斗の3連打であっさり2点をゲット。その後、両投手が頑張って7回の表まで0行進の0対2で推移した。
 ラッキーセブンが来た。
 西武の観客たちは真っ青な色の風船を膨らます。「燃えよ、ライオン」の定番応援歌がかかり、一斉に風船飛ばしである。この応援歌は昔からあるので私も知っている。
 7回裏のラッキーセブンで、ついに西武特急の打線爆発!
 1死1、3塁で3番の浅村がバックスクリーへの3ランホームランを打ち、合計5点。続く4番の山川穂高が、またまたソロホームランで合計6点の大量リード。最終的には7対3で西武ライオンズが楽天を降した。
 山川穂高くんの名前ってユーモラスじゃないか? 私は彼の名前から、てっきり長野県の穂高町に近い所の出身かと思っていたら大違い。出身は沖縄なのである。わがセカンドハウスがある安曇野の穂高町かと親近感を持っていたのだが違った。
 彼の登場テーマ曲が、悪いけど、すごく田舎臭くてドンくさい楽曲である。彼の身体も太目で、バッターボックスに立つと、でっかいお尻が存在感を主張している。おデブな顔も愛嬌があり、故障で休んでいる「おかわりくん」こと中村剛也選手に勝るとも劣らぬ面白選手である。既にこの日のホームランで10号、打率は5割越え、あーあ、こういう選手を阪神にも欲しいものだ。
 エース菊池は6回で降りたが3安打の無失点、十分に役目を果たした。
 最後に私の西武体験で、付け加えたいのは、監督をしている辻発彦さんのことである。彼は守備の華麗な名選手だったが、辻選手が現役の頃、私は東京中日スポーツ紙にコラムを書いていた。
 わが家では、まるで観音様のようにシンメトリカルな彼の顔に「観音様のはっちゃん」と綽名をつけていて、物凄く親しみを感じていた。
 それで、ある時、観音様の記事をコラムに書いたのである。試合の模様を「はっちゃん」中心に少々ずっこけて書いたところ、担当部長には受けなかった。私はスポーツ紙なので面白くなるように意図して書いたのだが、記者の方は作家の文章にはシリアスな文体を期待していたのだろう。
 はっちゃんの日焼け顔を見る度に、私はコラムの難しさを思い出す。
 今の調子で行けば、今年はぶっちぎりで西武ライオンズが優勝しそうである。阪神タイガースのファンである私としては、阪神の投手力も打力もイマイチでストレスが溜まりっぱなし。
 西武ライオンズよ、少しお裾分けしてちょうだいよ。