紅白歌合戦は幸薄(こうはく)歌合戦か

 

 幸薄とは「幸薄い(さちうすい)」とも読める。ハハハ。
 商売柄、大晦日のNHK紅白歌合戦は見なければならない。何時、誰に感想を聞かれるかわからないので、あまり関心はないけれども、お節料理を作りながら例年視聴している。
 ところが、このところ、年々、知らない歌手や、男か女か判別がつかない歌手が増えてきて、ますます関心が遠のいてきたのだ。
 今年でいえば、46組の歌手の内、半分は全く知らないか、聞いたことも見たこともないか、あるいは、歌と名前とが一致しないか、いずれにしてもほとんど意識の中にない歌手ばっかり。これでは益々積極的に見ようという気が起こらない。
 WANIMAってなんじゃ、それ?
 SHISHAMOってなんじゃ、それ?
 Little Glee Monsterってなんじゃ、それ?
 TWICEってなんじゃ、それ? 
――――初出場なのに「twice―2度」とはこれ如何に、ハハハ。
 エレファントカシマシってなんじゃ、それ?
 てな具合である。
 いずれも初出場の歌手らしいが、私には名前を聞いても認識がない。
 私はクラシックが好きで、軟派のはやり歌には昔から疎い。巷で大流行の音楽を聴きにライブに足を運ぶこともしない。軟派の殿堂であるサンプラザホールはわが家から近いのだが、一度も入ったことがない。だから、知らない歌手ばかりになるのも仕方がないが、行かない理由の最たるものは、悪いけど、素人もどきの下手くそが多いからである。実力派の演歌歌手を除いて。
 歌を聴かせるというよりは、奇抜なファッション、奇抜なパフォーマンスで「見せる」歌手には、エンターテイメントとしての興奮が味わえないのだ。
 さらに、今年も数字グループが何組も選ばれた。欅坂46、乃木坂46、AKB48のお嬢ちゃんたちは、私にはみーんな同じに見えてどこがいいのかさっぱりわからない。似たようなフリフリスカートに、似たような振付けで、歌はユニゾンばかり。これだけの人数がいれば、4部合唱にでもすれば素晴らしいのに、声をそろえて歌うのが精一杯なのだろう。
 歌手というよりは見世物グループである。太腿丸出しで似たような整形(失礼、もといっ)美人で、ちょっと下から撮られる腰振りのダンスは、殿方から見るとたまらなくセクシーなのだろうが、私には関心がない。
 それでも相変わらず歌手の人たちには垂涎のポストであるらしい。
 特に地方へ行けば「NHK紅白歌合戦」の神通力は絶大なのである。
 今年も白組で選ばれた三山ひろし君が、初めて紅白に選ばれた年、彼の出身県の高知では大騒ぎだったらしい。
 高知県など生まれてこの方、数度しか行ったことがない私が、三山ひろし君のことをなぜ知ったかといえば、選ばれた年(今年で彼は3回目)に、地元の放送局の報道バラエティのような番組で、スペシャルゲストとして出演していたのである。その番組を私は審査員として視聴する羽目になったのだ。
 たかが、ですよ。紅白に初出場したといって、地元の(NHKでもない民放の放送局)が報道番組で大騒ぎしていたのである。信じられなーい。
 アナウンサーがニコニコ顔で三山君を紹介し、ニコニコ顔で「選ばれた」と持ち上げ、歌手は照れるでもなく得意満面で胸を張って演歌をひとくさり。
 まるで故郷に錦を飾った凱旋将軍だ。それにしては田舎臭いけどね、彼は。
 歌手の人には九州や沖縄出身者が多いので、恐らくこうした県でも似たようなことはあるのだろう。
 かつてのように紅白出場が歌手たちのステイタスであった時代はとっくに消えて、今では、「なに、それ」と突っ込まれる時代になっているのに、未だに出場したいと涙ぐましいアピールをする人もいる。自ら降りた大御所は除いて、和田アキ子さん、小林幸子さん、八代亜紀さん、香西かおりさんらは蚊帳の外になって不満らしい。まことに罪作りな番組である。
 昨年、40歳になって初出場が決まったと廊下で嬉し泣きしていた市川由紀乃さんの例に見るように、今時流行らぬ「苦節10年」組もまだ存在する。そんなにありがたいのかね、たかが、紅白が。これでは正に「幸薄」だ。
 スポーツ新聞が煽っているのは、引退を宣言した安室奈美恵さんと、主題歌の桑田佳祐さんの不出場問題だ。乞われているのに出ない彼らはあっぱれ。
 2人共に私はあまり歌が上手いと思わないのでどうでもいいが、私が残念でならないのは、今年も元SMAPの5人の青年たちの顔が見られないこと。
 彼らは上手い歌手ではなかったが、抜群の雰囲気を持つ抜群の魅力にあふれた青年たちだった。今更だが、SMAPというグループが消滅したのは損失である。1人1人の品が良くて素敵だった。わが息子と同年代の彼らが、これからどういう人生を歩くのか興味がある。紅白出場歌手たちよりよほど関心がある。

 閑話休題。わが知人が伊勢丹の紳士館で草彅剛くんを見かけたそうだ。
 帽子をかぶっていたが、草彅君だとすぐわかった。
 へーえ。彼らも自分で買い物に行くのか。
 巨大事務所の呪縛が取れて、これからは、街で見かけることもあるのか。
 今年の紅白歌合戦よりずっと、私はそっちの方に気が惹かれる。