神宮外苑花火大会2019とイマドキ若いアベックの生態

 

 8月10日の夕方、かねて買ってあった神宮球場のアリーナ席に花火を見に出かけた。
 以前、東京湾大華火大会が行われていた頃、テレビ局の知人から招待されていたので見に行ったら、周り中が20代に見える若者ばかりで、何とも居心地が悪く、ホーホーの態で逃げ出したことがあった。
 また、10年ぐらい前、絵画館前の花火大会にも出かけたが、夕食付きの特等席というのを購入したら、確かに花火はよく見えたが、巨大なソーセージがドンと紙皿に乗っているだけのメニューで、「これで1万円?」とがっくりしたので、以後、敬遠中。
 今年、久しぶりにチケットを購入したのである。
 神宮球場のアリーナ席とは即ち、野球場の椅子席ではなく、フラットな選手がプレーをするフィールドにびっしり椅子を置いて、ナンバーを打ってあるのだ。私たちの席はステージと巨大スクリーンのある方に向いてちょっと左側の、とてもいい席だった。
 面白いことに、席はアリーナ席に下ってゆく通路の近くで、その通路とアリーナ席との境目を、ステージで演じた芸能人たちが横切って控室に戻ってゆくから、団体の踊り子たちが走ってゆくのを眺められる。
 4時半からステージでは前座のイベントが次々に演じられた。出演はLead、MAX、倖田來未、ゴールデンボンバーら。私は軟派のライブなどには絶対に「時間の無駄」と行かないので、物珍しい。途中で真っ赤な着物のオッサンが出てきて、踊りの振り付けを観客に指導し始めた。このオッサンは振付師の真島茂樹さんという方だそうで、松平健さんの新曲、『マツケン アスレチカ』の踊りをレッスンする役だ。
 私の周りの人たちは立ち上がって練習している。みんな従順なこと!
 やがて私たちの席の横の通路との境目を白いワゴンが人払いしながら通る。なんと、それにはド派手な衣装のマツケンさんが乗っていて、ステージ下で素早く身を隠すと、やがて舞台に上がってきたのだ。おう、本物のマツケンだ!
 先ほど真島さんがレッスンした新曲の『マツケン アスレチカ』をマツケンが歌い踊る。よく通る声でにこやかなマツケン。さすがのエンターテイナースターである。60も過ぎたオッサンがニコニコと観客に媚を売って、「みなさん、それでは花火を楽しんでください」と言うと、風のようにワゴンに身を隠して去っていった。次なる会場でまた歌うのだろうが、芸能人もご苦労様なことです。
 最後に出てきたゴールデンボンバーは私もテレビで見たことがある。マスクのお兄ちゃんや素っ裸の赤ふんどし姿に見覚えがある。なんかペチャクチャ喋って受けているが意味不明。この人たちが終わった後で次第にあたりが暗くなった。
 マツケンさんを別格として、NHKの紅白には落選したが、倖田來未ちゃんは観客に人気が高かった。しかし、彼女も歌詞がさっぱり聞き取れない。
 7時半ピッタリに、巨大スクリーンのデジタル時計が刻まれて、『どどどーっ』と最初の花火が打ち上げられたのである。
 ちょっと右側の正面に空高く大輪の花火が咲いた。特等席である。
 最初のスポンサーはヤクルト。なるほど、セ・リーグで目下ビリ街道を驀進中のヤクルト・スワローズは神宮球場が地元である。相当のお金を出していると見えて、花火が豪華だ。
 他にも次々にスポンサーが紹介される。聞いたこともない弱小スポンサーもいるが、それぞれの席に、前もってド派手な絵柄のトートバッグが置いてあり、その中にU.F.Oという名のインスタント焼きソバが入れてあった。そのメーカーの日清食品はお金を沢山出しているらしかった。帰宅後、私は全く食べたことがない、そのインスタント焼きソバをお湯をかけて食べてみたら、慣れない私は胸がもたれて気持ちが悪くなった。胃弱で困る。
 花火の途中で、天空に上がっていた大玉が、ある時、途中に散らばったので面白い演出だなあと思ったら、とんでもなかった。
 テレビや翌日の新聞に、『花火 地上近くで破裂 神宮外苑 花火で通行人けが』と出ていたのでびっくり仰天した。30代の男性の手首に飛び散った花火が当たり、怪我をしたと警視庁四谷警察署が発表したらしい。道理でちょっと中断したはずである。
 さて、私たちの周りにはアベックばかりがいて、後ろの席の4人の親子連れを除くと、若者ペアの花盛りである。席の価格が高いからか、20代や10代に見えるカップルは1組もいない。若者というより男性は30代か40代に見える中間管理職年代で、みな判で押したように女は浴衣を着ている。しかも、女性が甘ったれてベタベタしている。
 男性の方が色々話しかけてやるが、女は耳を疑うような幼稚さで、私の孫(小5)でも知っているようなことを、いちいち聞き返すのだ。そして、時々「あーん」と言って、男性にアイスクリームを口に入れてもらう。
 私は、男性の妻ではないような気がして、左隣のカップルをチラッと見たら、彼らは唯我独尊、夢中になってアイスを頬張っているのだった。ひょっとして女性はクラブか飲み屋で知り合った人で、奥さんに「出張」とか言って、彼女を連れてきたのではないかとさえ感じられた。
 影の声。「不倫ドラマの見過ぎだ!」
 1組だけアベックではないペアが右前にいた。あまり若くはないが、中年とも言えない年頃の女性の2人連れで、やってきた時に年かさの方が異様に目立つ大きなサングラスをかけていた。ファッションのセンスもなんとなく違和感があり、日本人ではないなと見えた。
 やはり、時々聞こえる言葉が中国語のようで、ははあ、夏休みで日本に遊びに来たのかと思ったが、時代は変わったのだ。
 前座のライブの時に、彼女たちは手慣れた様子で立ち上がり、日清食品のトートバッグと一緒においてあったマツケン アスレチカのハンカチを右手に持って、巨人の応援のようにクルクルと回し始めたのである。つまり、彼女たちはライブになれない日本人の私より、よほどわがエンターテイメント会場に慣れていたのであった。
 中国人のセレブか? しかし。金持ち風だが、何となく彼女たちは品がなかった。