東京都々知事たちの曰(いわく)列伝

 

 東京は世界一の大都市だというのに、その都市のトップに、唸るような大人物が就任してくれない。それどころか、またもやマスコミの餌食になる事態が起きた。思い返せば、これまでにも曰くありげな方々が続いてきたものである。
 1970年頃の都知事、美濃部亮吉さんは「天皇機関説」で有名な憲法学者の美濃部達吉氏の息子だったから、左翼系人物だが、恐らくお育ちが良かったのだろう。いつも上から目線の知事だった。公営ギャンブル廃止や老人医療費無償化などで膨大な赤字を作った。
 息子が生まれて3ヶ月で都心に引っ越すまで、都下のひばりが丘団地に住んでいた。そこへ現職の美濃部亮吉・都知事が来て住民たちと会話集会をやるというので、わざわざ転居先から息子を連れてひばりが丘団地へ行ったのである。
 緑濃いひばりが丘団地の木陰の広場で、団地の主婦たちが相当数集まって対話集会が開かれた。私は美濃部さんの支持者ではなかったが、幼い息子が、「みのべトチジ」というのが言い難いらしく、いつも「みのべイチジク」と言うので、大人たちが面白がって、わが家ではちょっとした「みのべイチジク」人気になっていたから出かけたのだった。
 進歩的な主婦たちが、まるでサクラのように美濃部さんの政策によいしょするので、つまらん集会だった。それよりなにより、美濃部さんの答え方が高飛車で、一見語り口は優しいのだが、いかにも無知な者どもに教えてやるという風な説教調なので私は嫌になり、集会の途中でさっさと退散した。1期目に期待した革新知事のイメージは次第に色あせてきて、「この方は都民のことは考えていない自己愛の塊の人だ」と失望した。
 鈴木俊一さんには私は長過ぎたという印象しかない。特に、4期目は80歳を超えてまで都知事に恋々としていて、「私の肉体は若い」とか言って、テレビの前で立位体前屈・・・つまり、立ったまま膝を曲げずに前屈して、掌をぺたりと床に付けた。肉体の柔らかさには驚いたが、前屈ができるからと言って都知事の能力とは関係がない。長すぎて飽き飽きした。
 彼の4期目の選挙の時、NHKでキャスターをやっていた磯村尚徳さんも立候補していて、庶民的をPRするために、銭湯で他人の背中を洗うパフォーマンスをやった。いつもダンディ気取りだった磯村さんの、全く場違いな行為に目を背けたくなった。結局、落選したけど。
 今でも、史上最低の都知事だと思っているのは青島幸男さんである。彼はテレビ人としては才能があったと思う。コミカルな作詞も個性があったし、「青島だぁ」のギャグもおかしかった。私は1度彼にインタビューしたこともある。仕立てのよい背広を着て真面目に答えてくれたけれど、都知事としては無能だった。カッコつけて選挙戦を戦わず、飛行機で外国へ行くなどというスタンドプレイに知性が感じられなかった。文才はあったかもしれないが、政治家としては落第の極みで、今でも、都政を弄んだと腹が立つ。カメラの前で、よく似た顔の夫人とお嬢さんがニコニコ笑うパフォーマンスにも虫唾が走った。
 石原慎太郎さんはパス。彼は一流の作家であるから、国会議員も含めて、政治家なんぞやらなくてよかったのに。都知事の時に週に2日(?)ぐらいしか出勤していないと聞いてのけ反った。気楽なのね、都知事って。
 さて、その石原さんがお辞めになる時、「彼は優秀ですよ」と言ったひと言で、圧勝した猪瀬直樹さんが医療法人、徳洲会の5,000万円の借入金でミソをつけた。一連の言い訳会見ですっかり株を下げてしまい、史上最高の得票を得た栄光は露と消えてしまった。都民として情けなかった。
 猪瀬さんには悪いけどエエカッコしいである。昔、彼が何かのベストセラーをお書きになった時、たまたまテレビ界のパーティー会場でおみかけした。テレビ局にインタビューされていたのである。人が集まる会場の入り口にカメラを呼びつけてインタビューされるとは田舎者だと思った。
 普通の神経なら、密かに自宅かホテルの一室か、あるいは局に出かけるだろう。さも自分が売れっ子のように他人に見られたいというのは成り上がり者の典型である。任期半ばで退職に追い込まれてさぞ残念だったろうが、こういう知事を頂いていた都民の1人として、誠に情けなかったのである。お書きになるものは立派なのだから、政治家なんかにならなくてよかったのに。男ってどうしてみんな似てくるのか。男の権力や勲章好きを女は理解できない。
 さてさて、お終いは現在ただ今の舛添要一さんである。
 週刊文春に書かれて、分が悪いねえ。
 出てくるものがみんないじましい。差別になるので書けないが、○○が悪いと言いたくなるレベルだ。ちゃんとしたお給料をもらっていられるのだろうに、どうして私用の出費まで公金で賄いたいのか理解に苦しむ。ケチ、吝嗇のご性格なのか。カッコ悪すぎ。東京オリンピックが泣く。
 私もヨーロッパへ旅行した時には、いつも超高級ホテルに泊まる。だが、自腹を切って「高いなあ」と嘆きながら宿泊するからこそ気分がいいのである。パリのル・ブリストル、プラザ・アテネ、オテル・ド・クリヨン、ヴェニスのネグレスコetc. どこもかしこも素敵だったが目玉が飛び出した。でも、わが家の収入で支払ったからこそ、この経験が身に着いたのである。後ろめたくない。
 どこかの大学の先生が、政治家はみんなやっている、舛添さんの袋叩きはおかしいと庇っていたが、私はそうは思わない。東京都知事は都民全体の、いや、ある意味で日本の顔なのである。総理大臣より目立つ立場だ。
 舛添さん、さっさと引退なさったら?