春は鬼門、桜も苦手、今井翼くんに同情する

 

 春は苦手である。
 木の芽時はいつも具合が悪い。
 今年は天候が割に安定しているので、マシであるが、どうも湿度に弱いらしい。気分も体調もよくない。
 加えて、桜の開花予想とか、上野の大騒ぎとかが報道され始めると、うんざりする。なんで桜だけ大騒ぎするのか。
 わが家のリビングの大窓の真ん前に、巨大な桜の木が2本あるので、格別花見に行きたいとも思わないし、某JRの駅までのバス通りには、見事な桜並木があって、いつでも見られるのだ。
 駅まで続く大通りには提灯がずっとぶら下げられていて、町中が桜祭りで大賑わいである。車は渋滞するし、いつもお茶するケーキ屋さんでは、何十分も待たねばお席が空かない。
 大体、桜の花自体を私はそんなに好きではない。
 若い方々は全く知らないだろうが、私にとって「桜=軍国主義」のイメージがつきまとう。第2次世界大戦中に国民を鼓舞するために歌われた数々の軍歌などに、いつも、「桜はパッと散って、(お国のために命を投げ出して)潔い」という思想が盛り込まれた。
 例えば、通称『予科練の歌』である。本題は『若鷲の歌』で、天下の西条八十作詞、古関裕而作曲、霧島昇歌唱とみんなが1流であるが、この歌詞が以下の通り。
 「若い血潮の予科練の 七つボタンは 桜に錨 
  今日も飛ぶ飛ぶ 霞ヶ浦にゃ
  でっかい希望の 雲が湧く」
 要するに戦闘機に乗って、潔く戦地へ飛び立つのを鼓舞している内容だ。桜のようにパッと散れ、と言っている。命の尊さもヘチマもない。
 加えて、桜というと日章旗のイメージもある。真ん中が丸い赤だけではない、朝日のように丸い円から四方に真っ赤な光が伸びている図案の日章旗だ。
 毎年毎年、春になると子供の頃に叩き込まれた軍国主義を思い出させられたり、疎開先の苦労を思い出させられるのはうんざりなのである。
 然り伺候して、私は桜が嫌いである。
 長年の根が生えたような東京都民だが、花見の時期に上野公園に行ったのはたった2度だけだ。
 早く葉桜になってほしい。
 さて、この時期の体調の悪さで少々八つ当たり気味であるが、季節の変わり目という要素で体調の悪さが引き起こされているのも確かである。
 ニュースによれば、昨年9月まで「タッキー&翼」で活躍していた今井翼くんがメニエール病の再発で活動休止するという。
 メニエール病は「世の中がグルグル回る、酷い眩暈」のする病気である。本当に気持ちが悪い。
 私もかつて患った。
 今でも油断はできない持病の1つである。
 子供が小さい時、夜は物書き業で夜更かしをするのに、朝はお弁当作りのため5時起きで、万年睡眠不足を我慢していたら、ある日、突然、世界中が回りだした。
 立ち上がるとふらふらして、身体が右へ右へと傾いてゆく。
 「ううーっ」と言ってしゃがみ込んで、俯いても目が回っている。何度か眩暈が続いた時、座り込んで手鏡で自分の目玉をみたら、本当に目玉がグルグルと回っているのだった。
 つまり、「めまい」という脳の中の感覚ではなくて、物理的にちゃんと目玉が回る症状なのである。
 気持ちが悪いことこの上ない病気だが、医者の言うには命にはかかわらないそうであり、あくまでも、耳鼻科的な病である。症状が強烈な割には、この酷い眩暈で死ぬことはないという。内耳に異変が起きるらしいが、基本的に原因不明で、ピタリと直る特効薬もない。
 今井翼くんは30代の後半、私もその年頃に発症した。
 メリスロン(別に薬屋の回し者ではありません)という薬が私には合って、今でも常時携帯している。
 高齢になってからも時々起きるが、私の場合は、ベッドで右を下にして横になると、時々世界が回りだす。だから、いつも左向きに寝なければならない。うっかり右を向いて寝ると、突然、あの気持ち悪さが襲ってくるので、枕を異様に高くする。頭を高く持ち上げると止まるのである。
 メディアや舞台で大活躍の、苦み走ったいい男である今井青年が、こんな病気で仕事キャンセルとは気の毒である。
 彼の場合は再発だそうだが、私も何度も何度も再発した。
 今では持病の1つでも、付き合い方がわかっているので、「大人しくなさいませ」と宥めすかして、出てきてもらわないように努めている。
 今井くんも、入院加療して症状が治まれば、また活躍できる。
 9月までペアだったタッキーこと滝沢秀明くんも、先日まで東海テレビの『家族の旅路』で主演し、いい演技をした。
 病からの回復と今後の活躍を私は祈っている。