映画『空飛ぶタイヤ』とイケメン2人衆

 

 池井戸潤さん原作の映画、『空飛ぶタイヤ』(松竹映画)を某シネマコンプレックスで見てきた。
 池井戸さんといえば、TBSの連続ドラマ、『半沢直樹』など、一連の成功したテレビドラマがあるので、最初は「映画館で池井戸作品?」と余り食指が動かなかった。だが、近頃は洋画にも見たい作品がなく、かといって、監督には悪いけど、カンヌ映画祭でグランプリを取った『万引き家族』にはどうしても足を運びたくなかった。
 パルムドール賞をゲットした秀作だろうが、私は是枝さんの『そして父になる』をあまり高く評価していなかったので、もひとつ、気分が向かわなかったのだ。ごめんなさい。
 予想はつくが、『空飛ぶタイヤ』は、赤松運送という中小企業のトラックが、走行中にタイヤが脱輪して、たまたま横の歩道を子供と一緒に歩いていた若い主婦の真上に飛んでくる。顔面に巨大なタイヤの直撃を受けた主婦は死亡。大事件に発展する話である。
 赤松運送は赤松徳郎という気のいい2代目社長が経営している。TOKIOのメンバー、長瀬智也くんが扮する。あの、連続テレビドラマ、『白線流し』の爽やか青年が大人になったものである。中小企業の社長の役だって。
 他に、『空飛ぶタイヤ』には、今を盛りの2人のイケメンが出ている。ディーン・フジオカくんと高橋一生くんである。私は昔から面食いで、高橋一生くんなんか、誰も注目していなかった頃から目をつけていた。
 民放の連ドラ『民王』の秘書役で注目されて、そこから一気にブレイクしたが、私は「ふん、何を今頃」と思っていた。
 近頃では、もて過ぎて露出オーバーだと思っているが、NHKの大河ドラマ『おんな城主 直虎』は、脚本が出来損ないでつまらなかったので、彼がいなかったら見る価値がなかったとまで思っている。これについては1度書いた。
 今はやりの面長、エラなし、ノッペリ美男だが、目の演技が上手いので見かけと違い軟弱な印象は受けない。『直虎』の政次は内心何を考えているのかわからない小ずるい男なので、高橋くん並みの演技力がなければ、ただの裏切り者に思われて、あれほど陰影深い男には描けなかったはずだ。
 『空飛ぶタイヤ』で彼が演じるのは、ホープ銀行の本店営業部で貸し付けを担当している井崎一亮である。タイヤが外れて事故を起こしたトラックの持ち主の赤松運送と、トラックの製造会社・ホープ自動車との関連の中で、ホープ自動車系列の銀行行員である。結構複雑な立場にある。
 彼の人脈の中に「週刊潮流」の女性記者(小池栄子)がいて、彼女とは昔曰くのある仲だったが、この事故に関してだけでなく複雑な業界の情報を得ている。
 人気ナンバーワンの高橋くんが演じる役としては出番も少ないし、ちょっと物足りなかった。
 もう1人のイケメン、ディーン・フジオカさんは、ホープ自動車販売部のカスタマー戦略課の課長、沢田悠太である。主人公の赤松運送にとっては目もくらむような大企業の重要ポストの人物。最終的に判明するリコール隠し側の人間であるが、彼は個人としては、常識も兼ね備えた真っ当な人間である。だから、リコール隠しという不正は許せず、同僚と一緒に情報を集める。
 おいしい役である。
 この人、朝ドラの『あさが来た』で五代様というカッコいい役で全国区になった時から、「横文字名前?」「ハーフ?」「奥さんが外人?」などと、売り出しのための策略かもしれないけれど、謎の都市伝説をばらまいていた。
 だが、実像はれっきとした日本人で、しかも、福島県という田舎生まれのお兄ちゃんだ(その割には品がいいよね、と陰の声)。
 デビューが香港とは、何で日本では上手くいかなかったのか、と詮索されそうな経歴だが、ショーン・川上の二の舞ではないみたいだ。
 高橋くんと違い、余り演技はうまくない。連ドラ、『今からあなたを脅迫します』という駄作や、終わったばかりの『モンテ・クリスト伯』というリアリティめちゃくちゃドラマに主演したけれど、五代様を凌駕する役には出会えていない。しかし、今回の沢田は陰があってよかった。
 全国ツアーもやっている歌手活動は、NHK総合の『うたコン』での演奏を聴いた限りでは平々凡々である。
 さて、映画全体の出来としては、可もナシ不可もナシ。監督・本木克英、脚本・林民夫、音楽・安川午朗。テレビドラマで毎度おなじみの「跳んでるおっさん」岸部一徳さんが、T会議というホープ自動車の秘密会議を主催する、いわば頂点のワルになった。
 大企業の常務取締役・狩野威としての貫禄十分だが、この人が出てくると、「なんかあるナ」と眉にツバをつけたくなるので配役としてはよし悪しだ。何故なら、テレビ朝日の連ドラ、『相棒』で殉職してしまう上司の印象が余りにも強かったので、既視感があるからだ。上手い俳優だから出まくってるし。
 元気印の寺脇康文さんが港北中央署の高幡刑事に扮して、狩野常務を追い詰める場面は、脚本家もこの2人の対決をクライマックスと意図して書いたと答えている。見ている観客の留飲が下がるシーンでもある。
 とまれ、エンターテイメントの企業もの映画として、支払った入場料分の元は取れた。私が見た映画館の入りは、土曜日だったが、あまり大きくない小屋に3割ぐらいの観客。宣伝しているほどの大ヒットとは思えなかった。