文化後進国ニッポンの年齢差別

 

 昨年の5月17日の毎日新聞東京本社の『女の気持ち』欄に、ある女性の投書が載っていた。この方は15年間アメリカに住んで、10年余り電気機器メーカーで働き、40代で帰国した。
 『~前略~、思い知らされたのが自分の年齢でした。仕事探しでは、職務経験や英語力より年齢が優先されるのです。秘書職は30歳まで、という求人もありました。悲しいよりビックリ仰天でした。
 ~中略~
 経験豊富な中高年は差別されています。年齢ではなくその人がどんなキャリアを積み、どれほど会社に貢献できるかを見るべきでしょう。米国で履歴書に年齢は書きません。欧米では年齢、人種、宗教、性別で採用を差別してはならないのです。
 日本では出生率が低いことが懸念されているのに、働いている妊婦は敬遠され、退職に追い込まれる。人手不足だというのに保育園が足りず、働きたい母親たちが困っている。米国人の上司は「日本の女性は気の毒だ。男性よりしっかりしているのに虐げられている」と言っています。メキシコ人の女性の同僚は「職場の女性に対する日本男性の意識の低さが気になる」とぼやいていました。
 アンバランスな変な国です。』
 この方は戻ってきた履歴書が段ボール箱ひと箱分にもなろうというころ、やっと面接に繋がって、40代後半で米国系の会社に採用されたそうだ。
 日本が男性側から見た女性の年齢差別のひどい、超時代遅れの国であることは昔も今も変わらない。私が実際に見聞きした例だけ挙げても、昔々、民放に就職した女性アナウンサーの定年が25歳(!)という酷い時代があった。現役で大学に入り、留年もせずに真っ直ぐ卒業しても、25歳定年では、たった3年間しか働けないのである。要するにこの時代、女性は若く美しい壁の花でよく、次々に首にして新しいのと取り換えるのが基本だった。
 だから、この投書の女性のように、キャリアとか経験なんか女には必要ない、というウルトラ蔑視がまかり通っていたのである。
 時代は過ぎて、「人手不足、人手不足」といわれる現在でも、年齢差別は厳然としてある。大体、メディアがけしからん。
 タレントでも文化人でも、テレビや新聞、雑誌に登場した人物の名前の後に、(カッコ)をして何歳と書く。これは全くいらない。
 大昔の時代錯誤の新聞社の入社試験で、「〇個のWと1個のH」というバカみたいな教えがあった。つまり、How、What、Why、Where、Who-いつどこでだれがなにをしたか、を書くのが鉄則という奴である。
 これと一緒で、人物の名前の後に年齢を書くべし、と教えられたのである。だから、その紙媒体の悪弊を真似て、テレビも(カッコ)何歳と書くのだ。バカか。
 現実にそこに映っている人が、何を喋るかの内容を見聞きして、その人物を評価すればいいだけ、数量的な年齢は知る必要がないのである。
 低レベルのその辺のオバハンが、近所でライバル視している主婦の年齢を気にして、「あら、私より歳喰ってるのね」と関心を持つのと同レベルである。
 美しい女優さんにまで、テレビ画面の表示に、(カッコ)何歳と書くのは、私に言わせれば冒涜である。吉永小百合さん、岩下志麻さん、もっと言えば、黒柳徹子さん、岸惠子さん、こんな第一線の活躍女性に歳の情報なんか邪魔である。
 文化後進国のニッポンでは年齢差別は女だけではない。
 ある大物のテレビプロデューサーの友人・A氏から聞いた実話である。彼は、民放、NHKを問わず、聞けば驚くような大ヒットドラマを制作してきた大人物で、ある時、朝日新聞からインタビューの申し込みがあった。
 色々話をした後で、フェイスシートの確認で年齢を聞かれたという。彼は、答えたくなかった。何故ならば、テレビは若者志向で、自分の実際の歳を書かれると、現場の若いスタッフたちとの間で差し支えが出ると思ったのである。私はこの感情がとてもよくわかる。
 個人個人の能力や最先端のものをキャッチする鋭敏な感覚は、数量的な年齢ではなく、その人の才能や努力によって差がでる。世代がこうだからと決めつけるのは日本人の遅れたところである。高齢でもセンスが若い人は一杯いる。
 A氏は「仕事に差し支えるので答えません」と言ったのである。まだネット時代ではなく、ウィキですぐ検索することは出来なかった。
 すると、朝日新聞の記者は答えた。
 「お仕事に差し支えが出るのはまずいですね。上司に相談します」だって。
 たかが年齢を書くなといっただけで「上司に相談」しなければならない朝日新聞も情けないが、天下(?)の朝日に書いてやるから歳を書くのは当たり前という上から目線もいやらしい。
 私だったら「企業秘密だ」といってやるわ。
 かつて、テレビのことで朝日新聞のインタビューを受け、橋田寿賀子さんらと並んで写真付きの記事に出た時、私たちの歳は書かれなかった。産経新聞では、「自分の年齢を不特定多数に知らせる義務はない」と注文を付けたら、私だけ(カッコ)何歳がなかった。毎日新聞では「カクカクシカジカ」の取材をしたいと電話が来たので、「新聞社は頭が固くて未だに歳を書くから会いたくない」といったら、それ以後、この新聞社から仕事の電話が来なくなった。結構結構。
 ネット時代に、明治時代の戸籍法みたいな時代錯誤の身元調査は不必要だ。PCにみんな出ている。関心がある人が自分で調べりゃ済むことである。