地下鉄サリン事件 23年目の結審 わが家も無縁ではなかった

 

 自分のコラムに何度か書いたが、あの大事件から23年も経った。
 わが家も地下鉄サリン事件(平成7年3月20日)と無縁ではなかった。
 ちょうど、マンションのリフォームをやっていて、リビングにある家財道具などの色々を、私の寝室に詰め込んであった。周り中が物だらけの中心部の奥底にテレビが置いてあり、当時も私は週刊誌に映像批評を書いていたので、まるで奈落の底を覗き込むように番組を視聴するアクロバチックな毎日だった。
 3月20日の朝8時過ぎ、毎日バイクに乗ってやってくる大工さんたちが、時間を過ぎても来ない。今のようにスマホや携帯はなかったし、固定電話にも連絡がなかったので、変だなあと思った。
 そのうち、テレビ画面に異常が映った。
 静止画像のような定点のカメラが街を映している。消防車も見える。画像の異常に比べて何が起きているのかよくわからない。地下鉄の築地駅周辺だった。
 地下では阿鼻叫喚だったのに、地上ではまだ人影はまばらだった。
 1時間ぐらい遅れて、やっと大工さんが来た。
 6号環状線の「中野坂上駅近くで止められたので・・・」という。
 規制線が張られていたので通れなかったのだ。しかし、彼も何が起きたのかはよく理解できていなかった。
 これから後は洪水のようなニュース報道で、私は奈落の底を見続ける羽目になったのだ。中野坂上では人が1人亡くなっている。
 家族の知人は築地でサリンを撒かれた車両に乗っていたが、何故だか悪い予感がして、その車両から別の箱に移動し、危機一髪で命が助かった。霞ヶ関駅や築地駅の周辺の地下鉄入り口には、もう立ち上がれない人たちが数多く階段などにもたれ掛っている様子がテレビに映し出されていたから、その知人は奇跡的に難を逃れたのである。
 それからは一連のオウム事件がぶっ続きで報道され、ゾッとしたのはわが家から近い最寄り駅のすぐそばに、彼らのアジトがあったことである。
 そういえばオウム真理教から国政選挙に信者たちが立候補した時、駅前で麻原彰晃に似せた不気味な被り物をかぶり、信者たちが下手くそな歌を合唱していたこともあった。わが家では泡沫候補の、まるでピエロ扱いをしていたが、テロ集団だとは疑いもしなかったのである。
 そのアジトからはポア(粛清)された人間の死体を入れた棺桶を、幹部が2階から外へ運び出す場面が、テレビに撮られていたのだが、私はなんか見た建物だなあとは思ったが、まさか見知っている駅近くの家だとは思いもよらなかったのである。
 さて、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件は結審したけれど、私は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの時のテロ発生を本気で心配している。何故なら、わが国は平和ボケで、いつ何時テロ事件が起きないとも限らないセキュリティの甘さがあるからである。
 例えば、パリでもロンドンでも、空港にはマシンガンをこれ見よがしに携行した警官や軍人がいるし、繁華街でカメラのフラッシュを焚くと、その瞬間に銃を向けられる。
 わが国では警察官でも拳銃は常時身に着けているとは限らない。
 心配なのは新幹線やJRなどの過密ダイヤの電車の中だ。乗り降りする時になんのセキュリティチェックもなく、私はいつも心配している。
 もしこの箱の中に手製の爆発物を持った犯人が乗り込んできて、連結器付近で爆発させれば、たちどころに新幹線の脱線転覆が起きる。この前のように車体の下に亀裂でも生じた列車ならば、もっと酷い脱線転覆炎上事故にならないとも限らない。
 飛行機のセキュリティチェックは外国並みでも、電車やバスは性善説の極みである。前提に悪い奴は乗っていないとされている。
 外国人がうじゃうじゃ来る2020年に、こんなに能天気でいいのか。
 先日見たクリント・イーストウッド監督の映画、『15時17分、パリ行き』に出てきたような凶悪な犯人が乗ってきたらどうするのだ。
 この実話では、強力な若者3人が勇敢に闘ってテロリストを抑えつけたが、日本人の軟弱な青年たちに、こんな屈強な若者が複数いるとは思えないのだ。バスジャック事件は何度か起きたが、新幹線は事故ナシを誇っている。テロなしが続けばいいけれど。
 それから原発に同時多発テロが起きる可能性もある。
 陸地側から原発内部に入るには、空港並みの厳重なセキュリティチェックがなされていても、海側からはほとんどチェックがないに等しい。
 以前、私が某原発を見学に行った時、その疑問を施設関係者にぶつけたら、「この人、何をいってるんだ」という風な間の抜けた反応が返っていただけだった。本当にわが国は平和ボケである。
 爆薬や銃器の類が持ち込みにくいとしたら、大型トラックをレンタカーで借りて、それこそ世界一過密な繁華街の、渋谷や新宿や浅草などの人込みでテロを起こす。歩道の上をジグザグに蛇行して人々を車で跳ねたら、たちどころに大量殺人に至る。考えただけで恐ろしいのだ。
 テロ防御の予行練習だとかいって、時々テレビに映っているが、テロリストが、そんなにわかり易い手段を使うだろうか。
 なんか後手後手に回っているような気がしてならないのである。