人様の食べる料理写真のどこが面白いのかわからない

 

 4月20日に、旧松坂屋跡に建てられた複合商業施設のGINZA SIXが開業した。2日前に時間が空いたので、仕事帰りに銀座へ行ったら、ここはまだ開業していなかったので、前だけ歩いて、帰ってきた。
 現在ただいままで私は中を見ていない。
 地下6階、地上13階のビッグビルである。
 テレビのニュースでは、グルメの店も多いらしいし、東京には出店したことのない地方の老舗も色々入っているという。さぞや今頃は混んでいるだろう。
 でも、私は開店早々のテレビ報道は信用していないので、当分行くことはない。何故なら、ずっと以前、羽田空港が新しくなった時に、当時ニュースのMCをしていたフジテレビの安藤優子さんが、羽田空港の中の江戸前のショップ街を興奮した様子でレポートしていた。
 美味しい店も沢山出ているので、飛行機に乗らなくても来ると楽しい、というような内容だった。
 てっきり、お店がいっぱいあって遊べるのだろうと、家族と一緒に羽田空港に出かけた。ところが、これが大空振り。江戸前風の店があるにはあったが、食事処は少なくて、はっきり言って碌な店がなかった。
 腹を空かしたまま、プンプン怒りながら帰ってきた記憶がある。
 テレビのレポーターたちは「宣伝してくれ」と袖の下を貰っているのではないかと私は疑っているくらいだ。
 だから、GINZA SIXも開店のほとぼりが冷めるまで、私は行かないつもりである。行列した人の頭を見るだけで帰ってきたくはない。
 イントロが長くなった。今回のテーマは、流行りのグルメ自撮りについてである。いつのころからか、雑誌の記者でもない人が、出された料理や自分で作ったおかずの類を、食する前にカメラやスマホで写真に撮るようになった。
 ある人はブログに自慢気にアップする。
 ある人は写メで友人に送る。
 何が楽しいのだろうかと私は不思議で仕方がない。
 例えば、子供の誕生日パーティーで、記念に腕によりをかけた豪華料理を作って写真に撮ったり、クリスマスの自家製七面鳥を撮るならわかる。でも、日常の食事の献立を人様に自慢して何がうれしいのか。
 日ごろ営々と、自分で無添加の食事を家族のために3度3度作っている私は、テーブルに並べた料理を写真に撮るほどエネルギーが残っていず、家族が「おいしい」と言って食べてくれたら、それで大満足だ。
 わざわざ、人を待たせて写真に撮る暇も余力もないのだ。
 あんまり料理上手ではなく、しっかり煮干しや鰹節のダシからとって、和風の煮物まで作ったりできない人が、レストランで出された料理の盛り付けを記念に撮って自慢する。あるいは、高級料理店で会食したと吹聴したいがために、写メで送る。と、私は邪推しているのだが、彼女らの心理は奈辺にあるのか。
 料理の献立の写真ばかり撮ってどうするの?
 以前、真冬の2月に、イタリアへ行った。
 いつもは自分たちだけで旅行を計画して、自由な家族旅行ばかりしていたのだが、その年だけ、初めてツアーに乗った。結構な値段の余裕のあるコースであったので、普通の観光地ではないアッシジの聖フランチェスコ教会まで訪れたのである。
 極寒のアッシジは底冷えがして、ガタガタ震えるぐらいだった。
 ちょうどお昼時で、町中の修道院と提携しているレストランで食事をした。
 美男子のウェイターたちは、僧服に似たウェアを着て食事を運んでくれたのだが、その旅行業者と提携して、日本人客に馴れているらしく、僧服のウェイターがパスタを運んできて、「こもり?」と言った。
 「こもり?」というのはまさに「小盛り」のことで、小食の日本人女性が「こもりにして」と言うのを、ウェイターたちが覚えてしまったのだった。
 パスタを前にして、ツアーの女性客が一斉にやりだしたのは自撮りであった。たかが修道院提携の安レストラン、見栄えもよくないし味も不味いし、部屋の暖房が故障していて極寒だし、いいことがなかったのに。
 そんな中でも料理の自撮りだ。
 私はバッカじゃないの、と思った。
 日本に帰ってから、友達に自慢するためか。私は料理より人間に興味があったので、ウェイターたちのビヘイビアをしげしげと観察した。恐らく彼らは、修行の一環としてこの仕事に従事しているのだろう。皆一様に薄着であったが、私たちのように「寒い寒い」と思ってはいないようだった。
 このイタリア旅行の間中、私はツアー客たちの自撮りイベントに付き合わされて、食前はいつも辟易のし通しだったのである。
 レストランで出される料理の美しさや配色の妙を学ぶために写真に撮り、後で自宅で参考にして料理を作るのなら意義があるが、こういう人たちは往々にして出来合いおかずの熱心なお客である。
 自分ではほとんど手作りしない主婦やOLも多い。
 そうでなければ、なんでデパ地下の出来合い総菜コーナーがあんなに流行っているのか。生の食材売り場の何倍も出来合い総菜売り場の方が大きい。
 まあ、どうでもいいけれど、見た目の盛り付けの美しさを写真に撮るくらいなら、レシピを聞いて自分で作ってみる方がはるかに体にはいいと思うのだが。