スクープ連発、『文春砲』のワクワク裏ばなし

 

 12月1日に発表された今年の流行語大賞の、トップテンに入った「ゲス不倫」ほかをスクープした週刊文春の、編集部の裏話がうなるほど面白い。
 有名な大編集者である花田紀凱さんと、週刊文春の現編集長である新谷学さんが、月刊誌「Hanada」の新年号で対談しているのだ。Hanadaというのは元月刊誌WiLLの編集長だった花田さんがご自分で立ち上げて、飛鳥新社から出版している月刊誌である。見かけはWiLLとそっくりで、ああ、ややこしい。
 そのHanadaの新年号に、~2016年は「センテンススプリングの時代」、『週刊文春』スクープに四つの種類が~というタイトルで、新谷学さんをゲストに迎えて、花田紀凱さん自らが対談の相手をしているのである。
 そもそも、花田さんは昔、文藝春秋社で有名な編集者だったから、この対談は先輩と後輩の顔合わせであるが、花田さんは大先輩なので言葉遣いがお友達風、新谷さんは「デスマス」調の敬語まじり、まず、そこからして面白い。
 週刊文春が今年連発したスクープは山ほどあり、写真が出ているものだけ並べても、「ベッキー禁断愛」、「美智子さまが雅子さまを叱った」、「甘利大臣に賄賂1200万円を渡した」、「育休国会議員のゲス不倫撮った」、「清原和博懺悔告白」、「少年Aを直撃」、「三代目JSBはレコード大賞を1億円で買った」、「都議会のドン、黒歴史」などなど記憶に新しいものがズラズラーッと並ぶ。
 私が当時、いちばん興味津々で読んだのは、「ショーンK 激白」と「舛添知事 公用車で毎週末 温泉地別荘通い」だった。ショーンKさんには何の恨みもないけれど、以前から「報道ステーション」にコメンテーターとして出演して、暗ーい声で古館伊知郎さんとやり取りしている姿が、私には何となく胡散臭く見えていたからである。だからこの時、やっぱりナ、と思った。
 《出発点は人間への興味です。・・・中略・・・うちの記者がショーンKさんの熊本の実家まで行って、「お父さんはアメリカ人ですか? マクアードルさんですか?」って。出てきたお父さんは熊本弁丸出しで》と新谷さんのお話(笑)。
 《記者が都庁の人間と情報収集を兼ねて食事をした際、「外遊費も問題だけれど、我々が問題視しているのは公用車の使い方です」と言われた。略。情報公開請求をかけて調べたら、年に四十八回も公用車で湯河原に出かけていたことが分かった。略。もしうちが第八弾までしつこく舛添問題を取り上げていなければ、・・・舛添さんは今も健在で、リオに旗を取りに行き、築地市場の豊洲移転も済んで、東京オリンピックに向けて粛々と進んでいたでしょう》と新谷さん。
 私はあの頃、舛添さんがリオだけは行かせてくれと泣いた時に思った。恐らく彼はお子ちゃまに自慢げに話していたのに違いない。「お父さんは偉いんだよ、閉会式であの五輪旗を受け取るんだよ。世界中に中継されるんだ」と。つまり、舛添さんという、東大は出たけれど、田舎臭い小者が、権力を握った際の「地が出た」みっともない姿を、文春は完膚なきまでに暴いた価値あるスクープだったと思うのだ。文春さんが書かなければ、都知事選もなく、われわれ都民も都庁の伏魔殿を覗き見ることもなく、税金だけ取られて公用車で使われて(?)、ヤギのように大人しく毎日を過ごしていたに違いない。くわばら、くわばら。
 近頃の紙媒体(特に大新聞)の記事は、ブリーフィングとか称して、お下げ渡しの記事ばかりで、どれを見てもおんなじ内容である。そもそも、記者は自分で歩いてネタを拾って調べて書いてナンボなのに、インターネットが普及してからは、記者たちがパソコンの前に座っている。調べものもパソコン検索、大衆の意見や動向調べもパソコン検索、サボりすぎだヨ。
 文春だけがどうしてスクープを連発できるのか、と花田さんが尋ねたら、新谷さんが答えた。
 《当たり前の答えしかないんです。「狙っているから」。略。長い時間とコストをかけて、裏を取って、リスクを取って報じているから大当たりすることもある。略。たとえば甘利さんの件などは、最初にうちがその話を聞いたのは昨年二月で、記事が出たのは今年一月、一年近く取材して裏取りをしています》。
 《告発者の一色氏は当初、読売新聞の記者に持ちかけていた。しかし、読売の記者は歯牙にもかけず、自分の飲んだコーヒー代も払わずに帰っていったとか。この差は一体何だろうね》と花田さんが問う。
 《やらされ仕事で、上から「とにかく話を聞いてこい」と言われて、形だけ聞いて「ダメでした」と報告するだけの仕事なのか、「俺が一発当ててやる、スクープに繋げてやる」と野心を持って日々過ごしているかの違いだと思います》と答えた新谷さん。昔はこういうトップ屋魂が普通だったのだが。
 いろいろな出版社や新聞社からさまざまな寄贈紙誌を贈っていただくが、3行読むと後はどんな内容か類推できて読む気がしなくなる記事の雑誌もある。週刊文春は3行でやめてしまう特集記事はない。記者がパソコンのコピペをアレンジして書いていると感じる内容も全くない。
 だけど。スクープを連発させる週刊誌商売も大変だと思うが、新谷さん曰く。
 《スクープによって世の中をあっと驚かせたり、面白がらせたりするのがこの仕事の醍醐味です。こんなに面白い商売はない。ファクトの面白さに勝るものはありません。略。新聞もテレビも、リスクとコストを考えて、長期にわたる調査報道をあまりしなくなった。新聞やテレビの記者は基本的に記者クラブで育っていますから、当局の裏付け、お墨付きがあるものを安心して流す傾向があります》。
 だから、どいつもこいつも、つまんないのね。
 センテンス(文)スプリング(春)さん、来年もドカンドカンとやって!!