オリンピック・パラリンピック開閉会式演出統括メンバーへの期待と懸念

 

 7月30日に発表された東京2020オリンピック・パラリンピック開閉会式での演出家たちの顔ぶれを見て、「やっぱりな」と思った。
 私が以前にも書いた通り、CMやアニメなどの広告宣伝に携わる人たちが中心に座るのはどうかと思っていた。「電通に丸投げ」だけはするなと願っていたが、パラリンピック統括の佐々木宏氏はモロ元電通マンである。
 リオ・オリンピックの閉会式でトンネルの中から出てきた安倍晋三マリオをヨイショする向きもあったが、スーパー・マリオを日本文化の象徴と肯定する日本人は、少なくとも私の周りでは1人もいない。
 あくまでも流行り物のアニメキャラクターであって、芸術や文化とは程遠い。ファミコン・ゲームソフトの中のキャラクターが、なんで何千年もの歴史のあるこの国を代表する文化芸術と言えるのか。
 たかが、ゲーマーのためのアイドルだろう。
 発表された顔ぶれはこうだ。
 総合統括・・・狂言師の野村萬斎さん。
 オリンピック統括・・・映画監督の山崎貴さん。
 パラリンピック統括・・・元電通局長の佐々木宏さん。
 彼らの下に来栖良依さん、菅野薫さん、川村元気さん、MIKIKOさん、椎名林檎さんの5人。 
 何が不愉快と言って、天下のオリンピックの開会閉会式を統括する国家的プロジェクトのメンバーなのに、われわれ一般人の与り知らぬ密室で決められてしまったことだ。
 しかも、リオ・オリンピックで奇天烈なマリオ・キャラを披露したグループからの再登用で、全国的に才能を発掘した努力の形跡もない。内内でなあなあと決めてしまった感じである。これでは五輪の私物化と言われても仕方がない。
 加えて、東京五輪エンブレムの盗作で大問題になり、首になった、あのにやけたデザイナーの事件とまるでそっくりではないか。
 これからでも遅くはないので、選考経過の情報公開をするべきである。
 即刻、説明するべし。
 唯一、私が評価出来るのは総合統括の野村萬斎さんである。彼は狂言師として1流であるばかりでなく、東京藝術大学で正統派の勉強もした上で、ロンドンに留学して西欧芸術の教養も身につけた。
 素人のぽっと出の一発屋の音楽家らとは違う。
 彼の記者会見での発言に「シンプルかつ和の精神に富んだものにしたい」「鎮魂と再生は復興五輪でも意味がある」「海外からの目線も大事にしたい」と期待できる内容である。
 白戸家の犬CMやマンガやゲームのキャラクターが如何に人気になっていようとも、それはどこまでいっても普遍性の疑わしい『はやりもの』である。
 日本の伝統芸能に身を置く野村萬斎が、統括して『はやりもの』の方向に傾かないように牽制してもらいたい。
 野村萬斎さんの日本の伝統芸能の他に、全世界を意識して、普遍性のある人類の遺産と言ってもいい西欧のクラシック音楽やバレエなども入れるべきだ。 
 先ごろ開かれたバルナ国際バレエコンクールでも4人もの日本人が入賞しているし、バイオリンやピアノの演奏家では、掃いて捨てるほど世界的な人材がいる。北京のようにたった1人のピアニスト・ランランに演奏させるのではなく、多くの人材を活用するべきである。
 さて、先ごろどこかのアンケートで、印象に残った五輪開会式の中で、東京五輪1964年のブルーインパルスによる空での五輪マーク雲というのがあった。
 1度書いたが、私はあの五輪マークの真下で現物を見たので、色付きは当たり前だと思っていたから、ビックリ仰天!
 ほとんどの人は映像で見ていて、しかも、モノクロ映像でしか見てない人が多いのだ。つまり、大多数のアンケート解答者が東京オリンピックの時に生まれていなかった?
 さすれば、その時、「総天然色(!?)」で見た私は、もう化石なのか?
 当時、四谷の若葉町に住んでいた私は、開会式に入る手立てもなく、「ついそこの競技場でやってるのに行けないなんて!」と切歯扼腕しつつ、テレビ中継を見ていたのだ。
 画面の中の開会式VIP席が映り、昭和天皇(当時は今上天皇)と皇后さま(後に香淳皇后)のお2人の横顔が見えた。
 すると、皇后さまがお隣りの天皇陛下の脇をつついて空を見なさいというゼスチャーをなさった。5機のブルーインパルスが飛んできて、それはそれは見事な5色の五輪マーク雲を大空に描いたのである。
 私は慌てて窓を開けて真上を見上げると、家の真上に五輪の飛行機雲が、手に取れるような近さで描かれていた。開会式に入れない情けなさが少しはこれで拂拭されたように感じた。
 東京2020では、私は冥途の土産に、何が何でも開会式に行く。
 1番高い30万円席でも買ってやる!
 野村萬斎さん、お願いだから、チャチい流行り物のアニメモドキのアトラクションはやめてちょうだい。
 薫り高い芸術文化のニッポンを全世界に見せて下さい。
 プロジェクション・マッピングなら絶対に葛飾北斎の「富嶽三十六景」よ。