またまたまた、大塚製薬株式会社が総合広告電通賞を取った!

 

 昨年も確か書いたと記憶するが、日本で最も権威のある広告のコンクールで、節目の年、第70回の広告電通賞がこのほど全部門で受賞作が決まった。
 なんと昨年に引き続いて大塚製薬株式会社が≪テレビ広告電通賞≫を受賞したのである。ご常連のサントリーでも味の素でもパナソニックでもなく、まあ、言わばダークホースの2漣ちゃん受賞でびっくり仰天である。
 昨年から、近頃売れっ子の吉田羊さんを起用した「ポカリ飲まなきゃ」は、好感度も高く、見ている者に「飲んでみようか」と思わせる「いざない」の効果がある優れた作品ではあったが、今回、テレビ部門で最終まで残ったトップのポカリスエットの内容は、1にもダンス、2にもダンス、3にもダンス、大勢でのダンスだらけのイマドキ風のパフォーマンスであった。
 いわば、人海戦術でんな。
 その勢い余って≪総合広告電通賞≫まで当社が取っちゃったのだ。
 テレビ部門は部門の区分けが以前とは異なって、商品部門はⅠとⅡの2つだけ、他にサービス・文化や企業・公共やスポット、シリーズと6部門になったので、当然、最後のシリーズ部門は1つの企業が作った同一商品の別バージョンが3つ並ぶことになる。
 そうすれば、印象に残るのは当然で、このポカリスエットも最後のシリーズ部門が当選したのである。これっておかしくはないか。少なくとも不公平だ。
 各部門の中で残った優秀作品を最後にまた選考するのだが、私は断然、企業・公共部門の代表になった赤城乳業株式会社の『値上げ』という作品を一押ししていた。
 兎に角、このCMは近来まれなる傑作なのである。あまり放映されているのを見たことがないので、内容を簡単に説明する。ネットの世界では昨年から海外でも話題にはなっていたが、私のように忙しい人間ではネット社会を泳ぎ回るヒマなどない。
 赤城乳業という会社は深谷市にあるアイスクリームの会社である。従業員373名のいわば中小企業だ。人気商品は『ガリガリ君』という名のアイスで、これを60円から70円に値上げしたいのだが、お子様対象商品の10円値上げは大いに抵抗があるだろうと、逆説的な戦術に出た。
 工場らしき建物の前に社員が同じような洋服を着て、こちらを向いて整列している。どの人もいたく恐縮している表情で、手は体の前に結んでいる。
 値上げしませんと言いつつ、最後には10円値上げして詫びるという上手い逆説的な展開を見せた。恐縮している社員たちの顔が素朴で、このCMの演出家はなかなかのやり手だと感心したのである。
 この作品がテレビ広告電通賞に選ばれてほしかったが、最終的には特別賞を受賞したので、私のような賛同者も多くいたということだろう。めでたい。
 例年、ご常連のように目立つ広告、トミー・リー・ジョーンズが宇宙人になるCM、浦島太郎や金太郎が出てくるCM、犬がオヤジのCMなどは、最終の候補作には残らなかった。『ガリガリ君』を1度食べてみたいものだ。
 日ごろ、家庭のテレビで目タコ耳タコで見ているCMが、必ずしも高評価されるわけではないのである。また、個人的な好みでいえば、宝塚出身の美人女優が、わざとタイプに合わない大口開けてビールを飲む「金麦」というCMを、私はスイッチを切りたくなるほど嫌いである。何故ならば、このタレントの媚びが見えることと、美人ちゃんがわざわざ髪を乱して演じているところに、下手くそな「ラフでいいでしょ」と誇示する田舎臭さを感じるからである。
 金麦なんかクソくらえだ、思ってしまう。損だよね、わざわざお金を使って。
 第70回広告電通賞の贈賞式は、来る7月3日の月曜日にグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにおいて盛大に行われる。今から、受賞者たちのスピーチが楽しみである。
 さて、広告と言えば、近頃私が腹ふくるる心地のしていることを少し述べたい。ネットにおける広告のあり方についてである。
 ネットで検索していると、次々に広告が侵入してくる。いちばん頭に来るのは、かつてちょっと車のことを調べた、本のことを調べた、病気の症状を調べた、などと検索すると、過去にアクセスしたものに関する宣伝が押し寄せてきてうるさいったらないのである。
 今はもう関心もないことに、しつこくいつまでも広告が現れると、「うるさいっ。死んでも買ってやるものかっ」という反感を抱く。逆効果だと思うのだが。
 書く必要があって、以前ちょっと駅前のサラ金の、看板に書いてある名前を片っ端から並べて書いたところ、わが家がサラ金の顧客になるとでも思ったのか、「わーっ」と勧誘の広告が押し寄せてきた。
 悪かったわね。わが家はマンションも一戸建ても両方とも所有しているが、ローンなどは全くない。常に無借金でやってきたのでサラ金のお世話になることもないのだ。無差別絨毯爆撃みたいに広告を打っても何の効果もないのである。バカめ! それどころか、私は某ネット会社(プロ野球チームももっている)のように、あらゆるジャンルに食指を伸ばし、悪く言えばピンハネの名人みたいな会社は毛虫のように嫌いである。日本人のメンタリティに合わない。
 その点、第70回広告電通賞の特別賞を取った赤城乳業株式会社のCMのような、おずおずと控えめな物言いには大いに共感する。
 広告といえども、人間の気持ちを逆なでしては決して心に響かない。
 図々しく騒々しく席巻すればいいというものでもない。