『真田丸』に出てくる真田幸村の末裔は不動産屋のオジサンだった

 

 私は歴女ではないので日本史に疎い。そもそも、日本史に恵まれない学校生活を送ってきた。どういうことかと言えば、中学では、歴史の先生が物凄い話好きで、歴史の授業中に脱線ばかりする。脱線名人だが人気があった。
 合戦のシーンになると負けた方に肩入れして、左手の掌を器のように丸めて、そこに滂沱の涙を流すふりをして悲嘆を語る。そして、最後は左手の器に溜まった涙をグッと呑んじゃう(恰好をする)のだ。生徒はそこでクスクス笑う。脱線のお陰で、3学期が終わっても鎌倉時代までしか行かなかったのだ。
 昔は悠長で、教育委員会が目くじらも立てなかったのだろう。
 高校では世界史と人文地理を専攻したので、日本史は鎌倉時代でプッツンのまま。それ以後は全部独学である。で、歴代のNHK総合で放送の大河ドラマを視聴する度に、その時代の虚像と実像をものの本で読んだり調べたりする癖がついてしまった。今回は戦国時代、それも滅びの大坂方である。
 どうでもいいが、たまたまわが家のセカンドハウスが長野県にあるので、本来ならばウハウハなのだが、長野県は2つの県がくっついたので南北に長く、安曇野市の私は上田市には行ったこともないのである。
 上田市は盛り上がっているらしい。1度行ってみたいと思っているが、忙しくて実行できない。それで、何よりの情報をキャッチしたのである。
 真田幸村の末裔さんの講演である。歴女ならば常識なのだろうが、私は今回初めて知った。真田幸村の子孫で14代目、仙台真田家13代の真田徹さんという方がいらっしゃり、このほど「真田幸村 虚像と実像 -大坂夏の陣後の幸村の子女達―」というタイトルで講演されたのだ。この方は昭和23年(1948年)生まれで、元は建設会社のサラリーマン。定年退職して以来、不動産賃貸業をなさっていて、上田市の観光大使でもあるという。
 この方の資料によると、真田幸村サンは精力絶倫なのだった。勿論、子孫を残すのが使命の武将はやたらに子供を作らせた。とても線の細い大河ドラマ「真田丸」の堺雅人くん的ではない。年表によると、「幸村の子女」は男子が4人と女子が9人の計13人も生まれている。
 相手の女性は表向きだけで6人もいて、13人の内、大坂夏の陣の後、5人は素性を隠して仙台の伊達家に匿まわれた。だから仙台真田家が存在する。それからえんえん血がつながれてきて、14代目の真田徹さんが不動産業のサラリーマンになったという顛末である。彼はごく普通のオジサンだ。
 豊臣家は血が絶えたとされているが、徳川さんの有名な末裔だけでなく、その辺にいっぱい戦国武将の末裔が存在するかもしれない。夢とロマンがあって面白いではないか。
 さて、大河ドラマ「真田丸」は大阪編に入ってなかなか面白くなってきた。これまで戦国もので出てくる秀吉は、草履取りから出世した元気なサルとして描かれるか、あるいは太閤殿下として教養のない成り上がり権力者と描かれるか、高松城の水攻めから引き返す信長の忠実な家来として描かれるか、いずれにしても世評の中での(元・藤吉郎)の姿が多かった。
 「真田丸」の秀吉はわが子に一喜一憂し、日常生活でも悩み多き家庭人の晩年の孤独がそこそこよく描かれている。ここでは英雄でも何でもなく、老いに怯える、毎日が疑心暗鬼のちっぽけな老人の姿である。キンキラの豪華な衣装を纏っていても、生来の卑屈で育ちの悪い成り上がり者の卑しさはぬぐえない。
 演じる小日向文世さんが実にうまい。猫背でニヤニヤ笑っているが、決して目は笑っていない。嫡子の拾(おひろい)を抱いているときの笑顔にも影が付きまとうのは、自分がいなくなってからの運命を感じているからだ。
 もう1人、期待以上だった俳優は、関白秀次になった新納慎也くんである。この人の経歴を私は全く知らなかった。調べてみると元モデルとか、素の顔からは想像もできないお公家さん顔で、後に一家郎党秀吉に惨殺される運命の翳がよく出ていた。配役の大ヒットである。
 一方、気に入らないのは「きり」になる長澤まさみちゃん。渋谷のガングロ娘のような演出で損をした。この人はNHKドラマ班に誰かシンパでもいるのか?よく大河ドラマに起用されるが、私は彼女が成功したと思ったためしがない。公家出身の真田昌幸(草刈正雄)妻・薫になる高畑淳子さんも、公家出身の元おひい様にしてはキョトキョトし過ぎで、あまり品がない。演出の責任もある。
 それと、ついでに文句を言うと、劇伴が期待外れ。新進ヴァイオリニストを起用した主題曲は服部隆之さんの力作だが、従来の重厚な時代劇調と差別化したいと思ったのか、現代曲的不協和音も織り交ぜてのメロディーライン。
 残念ながら作曲家の意図は分かるが、成功しているとは言いがたい。何よりも一番大切な主旋律に魅力がないのである。
 隆之さんのおじいさま・服部良一さんは軟派畑だったが、私は彼を現代日本のエンタメ音楽界ナンバーワンの天才だと思っている。彼に比べれば、お孫ちゃまはイマイチである。テレビの劇伴を数限りなく拝聴しているが、どれも発想にひらめきが不足していて、右の耳から左の耳に素通りしてしまう出来だ。
 勿論、そんじょそこらの劇伴屋さんとは比較にならない立派な作曲家だが、私の要求が高すぎるせいでゴメンナサイ。
 「真田丸」は大阪編で俄然面白くなってきたが、視聴率は下がり気味。これから、秀頼が大きくなって冬の陣、夏の陣と見せ場が多い。
 昨年まではあまりにもつまらないので、義務で見るのが苦痛だったが、今年は楽しく見ている。後、半年弱、ますます頑張ってちょうだい。