越生(おごせ)梅林、せっかくの梅まつりを台無しにする婦人会オバサンたちの塩対応

 

 大昔、埼玉県の越生梅林に梅見に行った時、肥料の貯め桶の臭いがきつくて閉口し、梅の花を愛でるどころか、鼻をつまんで早々に退散した記憶があり、長い間敬遠していたのだが、本当に何十年ふりかで行ってみた。
 前回は自家用車のPTクルーザーで行ったのだが、今回は帰りに池袋で用事があり、珍しく電車で行った。東武東上線の池袋駅から、急行だか快速だか、とにかく結構駅を飛ばして走る電車に乗った。それよりも、長く乗らなかった東武東上線の池袋駅がピカピカになっているのに驚いた。とても綺麗なターミナルである。
 昔はホント薄汚くて田舎臭いのが東上線で、大山駅にお茶の水女子大学の大山寮というのがあり、学生時代に友達がいたので1度だけ訪ねたことがある。
 改札の手前で駅員さんがパンフレットを配っていたので、「越生梅林はどう行けばいいのですか」と尋ねると、かっこいい長身の制服さんが「2番線です。すぐ出ますよ、行ってらっしゃい」と言ってくれた。おう、感じのいい駅だナ。
 えんえんと乗って、坂戸駅で越生線に乗り換える。坂戸駅から7つ目の終点が越生駅である。これが驚いたことに単線である。だから、駅で対向車が入ってくるのを待ったりして、「ここが東京の近郊か?」と口あんぐり。さすがはダサい玉。
 やっと越生駅に着いたが、土曜日の梅まつり中というのに駅周辺は閑散たるもの。みんなは車で来るのだろうか。越生梅林までは3キロもあるというのでタクシーに乗る。梅林まで走って1,090円。駐車場とは名ばかりの凸凹広場で車を誘導しているオジサンたちが、全員顔が真っ黒けのけ、1日中陽に当たっているためか、それとも農家の人のアルバイトなのか。
 入園料は1人300円、21日まで「梅まつり」のこの日は土曜日で晴天というのに、園内も閑散としている。梅の花は満開で美しいが、なんとなく侘しい感じがする。
 満開の白梅の他に、初めて見たのは紅梅のシダレ梅である。ずいぶん背の高いシダレ梅もある。濃いピンクで1本1本のしだれた枝にびっしりと花が並んでついている。見事だ。
 少し行くと道の端に大きなノボリが並んで立っている。
 笑っちゃったのはそこに書かれた文言である。
 「太田道灌を大河ドラマに」と太い黒字で書いてあり、その横には朱筆で「署名をお願いします」だって。ナントカカントカ推進実行委員会(笑)。
 太田道灌といえば江戸城を作った人というぐらいしか私は知識がないが、この辺りの出身なのか。ずいぶん昔、室町時代後期の人ではなかったか。
 へーえ。とにかくびっくりだ。
 地元の過去の人が大河ドラマに取り上げられたら、経済効果があるのか、それにしても、お暇なことで。またまたダサい玉(失礼)。後で調べたら、越生町の龍穏寺には太田道灌の銅像があるらしい。彼は風呂上がりに斬りつけられて暗殺された悲劇の人である。
 さて、お昼時になったので、真ん中の広場のようなところで軽い食事をとろうということになった。こういう観光地にありがちな、縁日の屋台のごとき店が何軒か並んでいる。それらの屋台の対面には婦人会がやっているうどんやそばの店もある。
 屋台と婦人会との間隔はホンの10メートルぐらいしか離れていないのである。つまり、真ん中のベンチと長テーブルを挟んで両者の店が向かい合っているというわけだ。われわれ遠来の客からすれば、どちらも越生梅林で商売をしている臨時の食べ物屋である。
 最初は婦人会の方でうどんでも食べようかと思ったら、食券売り場が遥か店の奥の奥の正面から見えないところにあるらしく、わざわざそこまで食券を買いに行くのも面倒なので、くるっと振り返ってすぐ向かい側にある屋台の、ジャガバターを500円で買った。連れはやっぱり500円で広島風お好み焼きを購入したのである。
 晴天で喉はカラカラ、見回してもどこにも自動販売機もなく、お好み焼き屋のお姉さんに、「お茶はいただけませんか」と聞くと、ニコニコしながら、顎をしゃくって、「あっちの婦人会にポットがあって、お茶はくれますよ」と親切に教えてくれた。
 ここまではよかったのだ・・・
 その後で、思いもよらないことが起こった。親切に教えてくれた屋台のお姉さんの言った通りに、真ん中のテーブルにジャガバターと広島風お好み焼きを置いて、婦人会のオバサンに近づいた。「お茶を2ついただけませんか」。
 目の前に大きなポットが2つあり、横に昔風の湯飲み茶碗が沢山伏せて重ねてあったので、それを見て私は頼んだ。
 チビで狐目のような薄茶のサングラスをかけた婦人会のボスらしいオバハンが、「買うんならどうぞ」と言う。ポットの横に水の張った入れ物があり、その中にペットボトルを何本か冷やしているのだ。だが、甘そうなジュースやコーラばかりでお茶ではないみたい。
 「いえ、こっちのお茶をいただけませんか」とまた聞くと、オバハンは意地悪そうに顎を突き出して、言ったもんだ。「ここで買わない人には飲ませない!」だって。
「あれ、今、私、あそこで1,000円も食べ物を買いましたよ」と言うと、「あっちじゃない!」。
 つまり、こういうことらしい。
 たった数メートルしか離れていない向き合った場所で、越生梅林の観光客用の食事広場にお互い陣取っているくせに、婦人会の超ダサいオバハンたちは、屋台の人たちに敵愾心をもっているのだろう。屋台で食べ物を買って、婦人会のバザーもどき素人作りの食べ物を買わない人には、只のお茶でも「やらない」というのだ!!!
 「うわあ、さすがド田舎!」「東京じゃ考えられないわ」と私も言ってやった。
 さりげなく、広島風お好み焼きの先ほど教えてくれたお姉さんのところに戻り、「お茶は屋台のものを買った人にはくれないんですって」と言ったら、「あの人は婦人会のボス。以前は気持ちよく誰にでもあげてたんですけどねえ」と困った顔をした。
 ドケチな婦人会の塩対応で、梅の見事さも吹っ飛び、2度と越生なんかに来るものかと毒づきながら帰ったのである。自動販売機ぐらい臨時で置け。東京に近くても、人間がダメだから、越生梅林は絶対に観光地として栄えない! 太田道灌だって、実現するものか。