木村拓哉と草彅剛、主演ドラマが終了した

 

 草彅剛くん主演の「嘘の戦争」(フジテレビ)と木村拓哉くん主演の「A LIFE~愛しき人~」(TBS)が終わった。2作品とも今期の中では面白い方だった。
 特に「嘘の戦争」は毎回ワクワクして見て、次回が待ち遠しかった。草彅くんがものすごい目力で、復讐に燃える詐欺師を好演した。
 30年前、幸せな家族だったのに、ニシナコーポレーションの長男・晃(安田顕)が引き起こした犯罪を隠蔽するために、まだ9歳だった長男の一ノ瀬浩一(旧名・千葉陽一、草彅剛)以外、全家族を皆殺しにして、浩一の父親による一家心中に見せかけさせた仁科興三会長(市村正親)をターゲットに、徐々に仁科家の全員に復讐を仕掛けてゆくサスペンスである。
 仁科家に近づいた浩一は、晃に取り入って信用を得る。次いで、女医の娘・楓(山本美月)に接近して彼女と恋仲になり婚約までする。
 ただ1人だけ次男の社長・仁科隆(藤木直人)が浩一を信用せず、何かと罠を仕掛けて一ノ瀬の本性を暴こうとするが、浩一はその都度危ういところで逆襲したり、すり抜けたりする。見ている方はハラハラドキドキ。
 浩一の復讐の最大のものは、会長・仁科興三に自分が味わったと同等の絶望を体験させ、自分の前で這いつくばって謝らせることだった。
 ついにその機会が来る。興三と隆を寂しい海辺に呼び出し、窓から見える小屋の中の様子を映像で見せる。そこには興三の最愛の娘・楓が椅子に縛り付けられて監禁されている。
 リモコンのスイッチを押すと小屋の中の楓の周りが炎の海になる。窓から外を見ると、小屋から実際に火が燃え上がっている。
 極悪非道の仁科興三がこの火炙りの映像の中の娘の姿を目撃して泣き崩れ、ついに浩一の復讐が遂げられるのである。病で薄汚く、愛娘を殺される場面に泣き喚くゆがんだ興三の醜悪な顔、ミュージカルスター・市村正親の一世一代のドラマ名演技である。
 共演の女詐欺師・十倉ハルカ(水原希子)が、浩一に「殺人はしないで」と泣いて訴えるが小屋は全焼する。だが、実はこれは大いなるトリックで、事前に楓の縛り付けられた映像を撮り、彼女を移動させてから、誰もいない小屋を燃やしたということだった。詐欺師仲間に裏切られたりしながらも、復讐も遂げ、殺人も犯さず、後味の良い最終回だった。浩一はタイに帰って、また詐欺師稼業。
 草彅くんのかつての「銭の戦争」よりは、笑いは少ないが関テレ(関西テレビ)制作らしいユニークな連ドラとして記憶される作品だったと思う。
 SMAP解散してもどんまいドンマイ。
 私が審査員の1人になっている「ザテレビジョン」の「ドラマアカデミー賞」の今期主演男優賞候補に、私は草彅剛くんをノミネートするつもりである。
 さて、お次は問題の「A LIFE~愛しき人~」で敏腕外科医に扮した木村拓哉くんについてだ。
 大体、私は医者ものは「ドクターX」の大門未知子で腹いっぱいである。どんな役に扮しても木村拓哉は木村拓哉、と言われるような木村くんにまで医者役をやってもらいたくはなかった。大門未知子と同じ敏腕外科医なんて、なんでわざわざ、飛び込み自殺みたいなことをするのかと思っていた。
 スタート直後に夕刊紙から取材が来て、私は答えた。
 「そもそも医者をテーマにしたことが失敗。医者ドラマは米倉涼子の独壇場ですでに辟易気味なのに、あえてぶつけたのが大きなミス。脚本も人間観察が浅く、若いプロデューサーの意図に翻弄され、脚本家が媚びてしまったとしか思えません。~中略~。特に、浅野忠信、松山ケンイチの役どころがチープすぎ。よくこんな役を引き受けたなという感が強いですね。~後略~」と散々けなしたのだ。
 最終回まで見て、今は少し評価が上がった。
 というのは、情けない副院長の浅野忠信さんの役が、最終回でちと盛り返したからである。
 病院乗っ取りと見られて解任され、実家でいじけていた壇上壮大(浅野忠信)は最後に立ち上がる。妻・深冬(竹内結子)の脳腫瘍が意外に深く、3か所もあり、沖田一光(木村拓哉)の手術で取り残した個所の再手術で、当日に脳外科医として手術室に現れたのだ。
 いじけた姿はなく颯爽としていた。
 手術後にベッドで、深冬とむつみあう浅野忠信さんの壮大の姿は夫婦の愛に溢れている。そういえば、モヤモヤしていたけれど、深冬は1度も壮大を裏切ったことはなかったのだ。嫉妬にまみれた壮大の独り相撲でもあった。
 一方、木村拓哉くん扮する沖田は1人アメリカに帰る。
 初回にアメリカから帰国して、最終回にまたアメリカに発つ。定番すぎるけれど、まあ許そう。このドラマの木村くんは顕微鏡ばかり覗いていたし、ストイックなまでに臨床医としての準備だけしていた。
 あの、天皇様の心臓手術をした順天堂天野篤病院長の監修だからこんなものなのだろうが、いささか動きがなくて退屈だった。
 最終回に視聴率16%を叩き出してよかったが、往年のキムタクドラマを知るわれわれにすれば、淋しい数字だ。
 また、颯爽とした検事さんをやってくれ。
 あ、あれは他局ですね。
 男盛りの木村、草彅のお2人さん、また面白ドラマを見せてください。