『おっさんとたたかれ、見返したかった』W杯代表の4人衆と、『おっさんずラブ』の乙女チックな吉田鋼太郎

 

 6月19日のW杯、日本×コロンビア戦に出場した4人衆のことを、毎日新聞が「反骨のベテラン」とのタイトルを付けて20日の社会面に大きく取り上げている。サブタイトルは「おっさんとたたかれ、見返したかった」とある。代表の人選がベテラン優遇ととられ、「年功序列ジャパン」「忖度ジャパン」なる表現まで生み出していたのだ。
 長友佑都くん31歳、香川真司くん29歳、本田圭佑くん32歳、岡崎慎司くん32歳の4人だ。香川くんはまだ20代なので、おっさんは気の毒だが、鮮やかなPKを決めたから入れてもいいだろう。何故なら、前監督時代に代表入りも危ぶまれていた人だからである。
 日本中が熱狂した日本×コロンビア戦の勝利で、改めてサッカー界でもおっさんパワーが炸裂したのはめでたい。
 近頃、あちこちで「おっさん」人気が跋扈している。
 1つには4月期の民放連続ドラマの中で、テレビ朝日が放映したナイトドラマ、「おっさんずラブ」が大人気だったので、流行りだしたらしい。
 私は最初、テレビ東京の「三匹のおっさん」が当たったので、その流れでテレ東が同工異曲作品を作ったのかと思っていたら、全く別のおっさん物語で、局もテレ朝だった。
 サラリーマンの田中圭が、敬愛する上司の吉田鋼太郎に愛を告白され、一方、イケメンの若手・林遣都に突然キスされたり、ルームシェアしたり、おしまいには田中くんと吉田さんが男同士で結婚式を挙げる羽目になっちゃったり。吉田鋼太郎には理解がある妻の大塚寧々がいて、離婚してくれたりする。
 恋をした吉田おっさんは、すっかり夢見る乙女もどきで、頬をぽっと染めたり、身をよじって田中くんを恋い焦がれたりするのだが、不思議と全然いやらしくなくて、微笑ましいというか可笑しいというか。
 吉田さんは芸達者だ。彼は以前から舞台人で有名ではあったが、2013年1月期のフジテレビの土曜ナイトドラマ、「カラマーゾフの兄弟」で、傲慢な父親役で一躍テレビドラマ界に衝撃的な存在となった。私も審査員をやっているザテレビジョン・ドラマアカデミー賞の助演男優賞を取ったことでも如何に素晴らしかったかがわかる。
 元々、「カラマーゾフの兄弟」は言わずもがなのドストエフスキーの名作だが、大胆に改変して日本の黒澤家の物語としたのである。殺される父親像を彼は強烈に演じた。彼は舞台で鍛えた発声が格別よくて、セリフが聞きやすい。
 そんな吉田さんが乙女チックな恋する上司になったのだ。可笑しいったらない。
 黒澤武蔵(吉田鋼太郎)は55歳で、恋する部下の春田創一(田中圭)は33歳、恋敵の牧凌太(林遣都)は25歳である。
 一昔前までは男同士の恋などというと、変態とか気持ち悪いとか、いずれにしてもアブノーマルな感情と嫌われていたし、そういう性癖の人はバレルのを隠したものだ。今はアッケラカーンである。しかも、若い頃の話ではなくて、55歳のおっさんになってからの、初々しくも切ない恋なのだから、時代は変わったのだ。
 「おっさんずラブ」の最終回は、春田創一が外国に赴任するところで終わったから、上司の黒澤と春田の結婚は成就しなかった(笑)。この人気ぶりと終わり方でゆくと、続編も期待できそうである。
 さて、いまは55歳といってもある種の青春は持続しているが、かつては50代どころか、40代でも、もう人生に恋だの愛だのはありえない終わった年代と考えられていた。
 昭和30年代に読売新聞に連載されて、一躍人気作品になった芥川賞作家、石川達三の「四十八歳の抵抗」という小説は、「おっさん」年代が、歳に抵抗する姿を描いている。ここでは、まだ40代だというのに「初老」(!)扱いで書かれているのだ。
 48歳の保険会社で地位もある男が、人生の黄昏を感じて焦り、悦楽の世界に誘われて、少女と出会う話だ。吉村公三郎監督、新藤兼人脚本で映画化もされた。
 主演は山村聡で奥さん役が杉村春子、娘が若尾文子、山村をよろめかせる踊り子のユカは当時歌手として人気絶頂だった雪村いづみが扮した。私の感覚からいえば、山村聡さんも杉村春子さんもおじいさんおばあさんである。そんな役者が48歳の役だなんて!
 まだたったの48歳だよ。現在、わが息子も40代の後半で、若いし人生の発展途上である。初老だなんてとんでもないワ。
 息子は時々、「昭和生まれのおっさんです」というが、平成生まれが30歳にもなるのだから、昭和=おっさん、という図式になるのかもしれない。来年、また元号が新しくなったらどうするのだろうか。さしずめ、昭和の前半生まれは「おっさん」を通り越して化石だ。
 織田信長の時代は「人生50年」だったから、ローティーンで元服して、もう大人、30歳にもなると「おっさん」だったのだろう。
 それが今では「人生100年」である。
 人生100年時代の「おっさん」は何歳からであるか。
 さて、終わりに、もう1度、サッカーの4人のおっさんたちが次のセネガル戦でも奇跡を起こしてくれることを祈りたい。
 「半端ないって」で脚光を浴びている大迫勇也選手に、CKで絶妙のパスを届けた本田圭佑くん。赤ちゃんが出来てヤニ下がっている長友佑都くん。怪我した脚が心配な岡崎慎司くん。PKで先制点をとった香川真司くん。
 私はプロ野球派で、昔はサッカーに興味がなかったが、日韓共催のW杯で横浜の決勝戦に招待されて以来、関心が高まった。決勝戦の色々なグッズ、小さなカップや帽子や双眼鏡や名札入れなど、今でも持っている。レアものである。
 今回はドイツが初戦で敗れたり、ランクの低いロシアが勝ちまくったり、予想を覆す試合も多い、日本もランクは低いが、おっさんパワーで次戦も勝て!
 ニッポン、チャチャチャ。
 おっさん、チャチャチャ。