総合賞はパナソニックと福島民報社の2社が取った!

 

 去る7月1日、品川のグランドプリンスホテル新高輪の国際館パミールという大ホールで、第72回広告電通賞の贈賞式が盛大に行われた。
 今年からネーミングが代わって、伝統ある「総合広告電通賞」が「総合賞」だけの呼び名になった。例年は各部門でいろいろな賞を受賞した会社が1つ、「総合広告電通賞」として表彰されたが、長い長い広告電通賞の歴史の中で、今回、初めて2社の同時受賞となったのである。
 このパミールというバカでかいホールへ行くのを私は余り好きではない。何故なら、かつてわが家の車で天現寺の方からアクセスしようとして、ぐちゃぐちゃになった経験があるからである。こういう時にGPSなんかクソの役にもたたない。
 GPSは田舎では大いに役に立つが、東京の日夜変化している都心地帯では、人間の勘の方が上で、細かいところはダメ。東京に根が生えている私は、勘で大体わかるが、それでもパミールへたどり着くのは一方通行があったりして難題だったのだ。
 従って、ここ数年はすべて公共交通機関を利用する。JR品川駅から歩くのだが、坂道の上に、サラリーマンや学生など、男性の大きな人たちが坂の上から降りてくる。
 その度に小さな私は歩道の片隅によって道を譲らねばならない。疲れる。
 今回は仕事が立て込んで忙しかったし、毎日疲労困憊していたので、運転手さんたちには悪いが、タクシーを拾った。あっという間に坂を上がってくれて楽だったが、基本料金の近距離だったので運転手さんには気の毒だった。
 パミールの玄関前で車を降り、会場の受付前に着くと、毎度のことだが私は排除されそうになる。係りの(どうせみんなアルバイト女性だ)リクルートルックの受付前に並んだお嬢さんたちが、「あちらへ」とか言って、私を来賓や関係者の受付テーブルの方に行かせないようにするのだ。いつものことである。
 私も毎度のことでムッとして、「選考委員ですけど・・・」と言ってやる。
 ここで相手は「失礼しました」と吃驚して受付方向に通してくれるのだが、顔は「このオバサンが?」という風にそっけない。
 言っとくけど、『貴女が生まれる前から私は選考委員をやってるのよ!』と腹で毒づく。
 私はテレビに出ないので顔は電通賞関係でも1部の人にしか知られていないから、企業の黒服たちが正装してキラ星のごとく集まる大セレモニーの入り口では、ホテルにお茶をしにきたヒマなオバサンと見間違われるのである。バカもの!
 招待状を出して、胸につける関係者章をもらいエスカレーターで登ってゆく。
 会場はもう7割がたの人の波だ。
 正面に巨大スクリーンと演壇。さすがは電通さん、照明といいデザインといい、万事が垢ぬけている。
 さて、定刻に授賞式が始まった。
 入賞一覧が壮観である。
 プリント広告、オーディオ広告、フィルム広告、OOH広告、デジタルコミュニケーション、アクティベーションプランニング、イノベーティブアプローチ、などなど、ちょっと聞いただけでは「何のこっちゃ」と言いたくなる部門だらけ。
 それらの中の最高の作品として、総合賞が2つ選ばれたのは、先述したようにパナソニックと福島民報社である。
 昨年、社歴100年を迎えたパナソニック株式会社、私は今でも松下幸之助さんが作った松下電器株式会社という方がなじみやすいが、ナショナル変じて、今、パナソニック株式会社が貫録の受賞である。
 どんな方が受賞挨拶をなさるのかと思っていたら、津賀さんという今の社長が登壇した。見るからに大企業のトップという雰囲気の、ガタイのいい紳士である。創業100年を祝った翌年、101年目の受賞で大変喜ばしいという内容だった。
 3部門もゲットしていて、デジタルコミュニケーション部門の最高賞。これは『聴き鳥テスト』と題して、補聴器などのための聴力テストに、自然界の森の中などに生息する鳥の声を聴き分けるという優しい内容である。高齢化社会に目を付けた補聴器を売っている子会社と連名で最高賞を取ったのである。相変わらずこの会社は商売上手だ。
 私も選考委員をやっているフィルム部門(昨年まではテレビ部門という名前だった)では、パナソニックは金賞を取った。「パナソニックの店・・・街のでんきやさんはつづく」と題したチェーン店のほのぼの後継者の話である。
 あと1つはOOH広告の銀賞で、これは私は関係していないのでどんな内容か知らない。
 もう一方の総合賞を取った福島民報社の作品は、「おくる福島民報」と題したCM。東日本大震災に遭って8年経った今でも郷里の家には住めなくて他県で住んでいる人のために、「県民の日」に自社の新聞を送ってあげたという被災地ならではの企業広告である。
 地方紙の面目躍如。他にこの社はプリント広告で金賞とフィルム広告で銀賞も取った。
 地方新聞が自社の広告で最高の賞をゲットしたのは快挙である。いつもCM上手の常連会社ばかりが表彰されるのはつまらない。だから、今年の福島民報社には大拍手だ。
 最後にこの賞のスポンサーである株式会社電通の社長さんが挨拶をした。例の過労死した女子社員の問題で前社長が退陣した後に、代表取締役社長に就任した山本敏博さんである。まだ、還暦過ぎたばかりの気鋭の社長さんだ。
 ペーパーも見ないで堂々たる挨拶ぶりであった。
 この方、最近、わかったことなのだが、どうも私が住んでいるマンションに住んでいらっしゃるらしい。「!」びっくり仰天。
 あちらは大企業トップの大金持ち、こちら庶民の物書き。
 ほんとかしら。
 わがマンションは出入り口が何か所かあるので、お目にかかったことはないが。
 兎に角、驚いた。