振り込め詐欺に引っかかった被害者にされそうになった私

 

 NHKの夕方ローカル番組で、「ストップ詐欺被害」というシリーズを放送している。以前は口元が可愛らしく、まるで昔の童画に出てくる女の子のような橋本奈穂子アナウンサーが司会をしていたが、3月でいなくなっちゃって、今はギョロ目のアナがやっている。名前は忘れた。
 この「ストップ詐欺被害」を見ていると、世の中にはバカな高齢女がこうも沢山いるのかと呆れてしまう。だって、息子を名乗る見ず知らずの男や、その仲間に、ホイホイと何百万円もの大金を手渡ししているのである。信じられない!
 現金をそんなに多く手元に持っていること自体も不思議だが、「振り込め詐欺、振り込め詐欺」とあちこちに注意書きがあり、「かあさん助けて詐欺」という新ネーミングも大分普及してきているのに、どうして赤の他人に現金を手渡しするのか、全く理解できない。
 だから、私はこうした詐欺被害は自己責任なので、騙されるバカ女は放っておけばいいと思っているのだ。どんどん騙されてくださいという心境だ。
 銀行のATM機の前では携帯やスマホを使用してはならないと張り紙がしてあるが、これも大迷惑である。何故なら、私はスマホが電話帳になっていて、仕事関係の個人や法人の銀行口座番号も住所氏名電話番号も、あらゆる情報をリストにしてあるので、ATMの前でスマホを見ながら振り込みをすることがよくあるからである。
 恒常的な電話、ガス、電気、NHK受信料、生命保険料、別荘や自宅マンションに関する経費などは総てが自動落とし手続きをしてあるので、不定期のものは見ながらでないとわからないのである。スマホを手にして振り込んだりしていると、ロビーマンが飛んで来そうでハラハラする。余計なお世話である。
 繰り返すが、振り込め詐欺に引っかかるのは、かかる本人が馬鹿なのであって、詐欺で現金をとられても、本人のミス、放っておけばいいのである。
 日本は万事が過保護、駅のアナウンスも煩いぐらい繰り返して過保護、詐欺被害などは被害をこうむる本人が悪い。個々人が意識して予防するべきだ。
 この、超過保護体質のお陰で、私はえらい迷惑をこうむったのである。
 今年の初夏のことである。
 まとまったお金を用意する必要が出来て、某ゆうちょ銀行本局の窓口に行った。定期貯金の2口を解約すると足りるので、500万円の1口と250万円の1口の合計750万円を現金化しようと思った。
 取り敢えず最初は500万円の解約手続きの書類を書いた。
 すると、窓口に呼ばれ、「何のために使うのか」と聞く。
 「自分の金を何に使おうが私の勝手でしょ」と答えると、聞く決まりになっているからと押しつけがましく男が言う。
 面倒なので「他行の自分口座に移し替えるんですよ」と言うと、相手は頷いて、「ではこちらにお越しください」と応接間に通された。ボディガードでついてきた家族と共にその部屋に入った。
 しばらくして5個の札束を用意した行員が2人、れいれいしく、勿体ぶって私の前に札束の入った茶封筒を置いた。「お改めください」と言う。
 「まさか銀行さんがネコババなんかなさらないでしょ」と軽い冗談を言って、私は札束の1つ1つは改めもせずにさっさと失礼した。ここまではよかった。
 その日から1か月ぐらい経って、今度は250万円の定期貯金の解約に、よせばいいのに、この前と同じ某ゆうちょ銀行本局へ行ったのだ。私は別に悪いこともしていないし、自分の口座から現金をおろすのに、わざわざ別の局に行く必要もないと思ったからである。
 用紙に解約手続きのイロハを書いて窓口に出したところ、窓口の男がすっ飛んで奥に消えた。ガラス越しに見ていると、何やら上司に説明をしている様子。相当待たされた後で、先ほどの男が、怖―い顔してやってきたのだ。
 「この前も解約されましたね」。
 「はあ、500万ここで解約しましたが」
 「な、なんで、また・・・」
 「そんなこと貴方に言う必要はないでしょ」と私はムッとする。予想通り相手が不審そうな振りをするのでうんざりしたのだ。不愉快である。
 男はまた、すっ飛んで奥に消えて、しばらくしてから息せき切って出てくると、怖い顔で私に言った。高飛車な脅すような態度である。
 「今、警察を呼びますから」!!!
 今度はこちらが呆れた。なんで犯罪者みたいに警察を呼ぶの?
 「貴方ねえ。私は何も悪いことしてないでしょ。自分のお金をおろしに来ただけで、なんで警察を呼ぶのよ。何法違反ですか?」
 頭に血が上った。デカい声を出したので他の客が一斉にこっちを見た。
 「局長をここに呼んで来なさい! 私はテレビに出ないから顔を知られていないけど、ちょっとは名の知られた作家よ。ただの主婦じゃありません。これ見なさい。これは作家としての私のサイトよ。この顔が出てるでしょ。なんなら、インターネットで貴方の名前も書きましょうか、こんな酷い目に遭ったって。逆に警察が来たら名誉棄損だと訴えるわよ!」
 スマホの私の画面を見て、男はまたまたすっ飛んで上司のところに戻った。
 その後、おずおずと出てきた行員が、この前の応接室で250万円と何がしかの利息の札束を私に渡したのはいうまでもない。
 チンケな元公務員の度し難い小者ぶりには、呆れてものが言えない。